つなぐ通信:人や文化をつなぐカルチャーマガジン

「藍工房」代表・竹ノ内睦子さんの夢(Vol.3)

投稿日: 2014/01/10

『つなぐ通信』冬号(Vol.4)の「大人のまち物語」で
書ききれなかった「藍工房」代表・竹ノ内睦子さんのことを
もう少しお話したいと思います。
竹ノ内さんが淡々と話す障害者との歩みには深い感動を覚え
小さなことでうじうじしている自分に
「私もがんばろう!」という大きな力をもらいます。

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・・・・藍工房のことを説明してくださる竹ノ内さん・・・・

自閉症の子供は、エネルギーが溢れているのだといいます。
「暴れたり、穴をあけたり、ガラスを割ったりしても
私は全然平気なの。壊れたものは直せばすむことだし…
○○君、それですっきりしたのって聞くの。
でも、決していい顔はしていないのよね。
そのあり余ったエネルギーを制作の方に向けたり
みんなに“ありがとう”と言われると
暴力を振るわなくてすむのね。
暴れたりするのはひとつの表現であって
言葉で表現することができないからなの。
私たちが、彼が何を表現したいのか、何が欲しいのかを
受け取れないからだと思うの」。

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・・・・2013年6月14日にお母様の誕生会に家族でご利用された
安倍総理と記念写真。ウエイトレスになる夢がかなったはるかさんが
安倍首相の隣りにいます・・・・

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・・・・2013年5月23日に開催された
「安倍総理と障害者の集い」が切っ掛けで
安倍総理が『アンシェーヌ藍』を訪れることになりました・・・・

藍工房で制作を始めると、半年くらいで
制作の方にエネルギーが切り替わっていくのだといいます。
「人間って、心地いいものの方を選ぶのね。
作品を買ってくれた方が
良かったよ、大切にするって言ってたわよ。
またあなたに会いにきたいと言ってたわよ。
とか話してあげると、もう暴力的なことはなくなるの。
暴力的なことは、自分を分かって欲しいというサインなの。
それを分からない職員が、羽交い締めにしたり
“しょうがない人だ”と言ったりするけど
決してしょうがない人ではないんです。
受け止め方なんです」

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・・・・三軒茶屋の裏通りにある『アンシェーヌ藍』
入口が分かりにくい2階にあるので、
まだまだ知らない方も多い・・・・

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・・・・木曜日にはハープの生演奏を聴きながら
ランチができます・・・・

竹ノ内さんは家族が手に負えなくなった障害者の方と
一緒に暮らしたり、自らグループホームの当直もします。
いつでも竹ノ内さんを頼って来られるように
ドアには鍵をかけていません。
「ドア開いているから、
死にたくなったらいつでもいいから絶対おいでね」
二晩か三晩一緒の部屋に寝ると、自殺から逃れることが
できるのだといいます。
辛い経験をしたからこそ、そうしてきました。
常に仕事とプライベートの境がない毎日ですが、
しかし決して無理はしていないのだといいます。

「今日は夫婦喧嘩してきたから私に近寄らないで」というと
「まあまあそういわないで」とコーヒーを運んで来てくれたり、
「今日は一銭もないからお金のことは言わないで」というと
「私ごちそうしてもいいですよ」って。
「それはステキですよ(笑)」と
竹ノ内さんは楽しそうに話してくれます。

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・・・・東京會舘でシェフを務めた尾原寛さん(左)を調理長に迎え
料理やテーブルマナーを指導していただきました。
それ以外の調理人やホールスタッフのほとんどは障害者です・・・・・

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・・・・「藍ランチ」¥1,365(下)は2種類のメニューがあり、
ちょっとゴージャスな「ラベンダー」¥2,415(上)もあります。
いずれもサラダ、スープ、デザート、パン、コーヒーのコースメニュー・・・・

「私も車椅子で生活しているから
障害者の子達は私のことを“横並び”で見るのね。
車椅子を押すことで私の役に立っているし
私をケアしてくれている。
私の中では“上から目線”がないのよ。
いつも本音で言えるから…だから続いている。
ホームに宿直しても、今日は疲れているから
みんな自分でやってね…そんなかんじ。
なかなかいいもんですよ(笑)」

まだまだ竹ノ内さんのインタビューで
みなさんにお伝えしたいことは山ほどありますが、
竹ノ内さんの活動の30年を綴った
『障害者の夢に夢を重ねて』天野寛子著(ドメス出版)も
ぜひ一読をお勧めいたします。

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・・・・『障害者の夢に夢を重ねて』天野寛子著(ドメス出版)・・・・

2013年12月3日、竹ノ内さんと障害者のメンバー40人が、
NY国連本部で開催された国際障害者デーに参加しました。
竹ノ内さんはそこでスピーチをされ、
メンバーの作品展も開催されました。
実は、『つなぐ通信』の取材撮影日に、竹ノ内さんから
病気が再発し、NYから帰ってきたら手術をすることを伺い
本当に驚きました。
国連でのスピーチの様子をビデオで拝見し、
体調が最悪の中、よくあのような大役を務められたと
感動いたしました。
その後手術も終わり無事退院されたと伺い
胸をなで下ろしていますが
まだまだ竹ノ内さんには元気で頑張って欲しいと
多くの方が願っています。

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・・・・オリジナルのクッキーやパスタも販売されています・・・・

竹ノ内さんの夢は障害者の夢を叶えること。
『つなぐ通信』やこのブログを機会に
フレンチレストラン『アンシェーヌ藍』
「藍工房」の素晴しさをもっと多くの方達に
知っていただければと思っています。
私たちが利用することで得られた利益が、
スタッフのお給料に跳ね返り、
それは自立のための大きな力となります。
もちろん料理の味も、作品のクオリティも申し分ありません。

【文・写真:成田典子】

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