「藍工房」代表・竹ノ内睦子さんの夢(Vol.2)
投稿日: 2014/01/06
『つなぐ通信』冬号(Vol.4)の「大人のまち物語」で
書ききれなかった「藍工房」代表・竹ノ内睦子さんのことを
もう少しお話したいと思います。
竹ノ内さんが障害者の自立支援を行うことになった
いきさつは、「Vol.1」をご覧ください。
・・・・竹ノ内睦子さん(左)と
『アンシェーヌ藍』のマネージャー大野圭介さん(右)・・・・
竹ノ内さんは、障害者が自立できる仕事を持てる場として
「藍工房」を設立しました。
そして、障害者が家族から自立して
地域の中で生活していくための生活訓練ができる場として
グループホーム「藍ハウス」や、
アメリカに「Aikobo USA」も作ることができました。
もちろんすべてがスムーズに進んだわけではありません。
障害を抱えた家族は、
本当に大変な思いをして暮らしています。
「しょうがないんだ、このままの一生なんだ」と
半ば諦めているし、その存在をあまり知られたくない。
病院に入れて一生そこで静かに終って欲しいという
本音もあります。
しかし、竹ノ内さんは「それは違う」と思ったのです。
「障害者も同じ人間。感情もあるし個人の想いや夢もある。
選ぶ権利もあるの。私はそういうことに目を向けたいと思ったの」
・・・・『アンシェーヌ藍』で開催された個展「工藤はるかの世界」・・・・
アメリカに「Aikobo USA」を作り、
障害者にアメリカの生活をとことん経験させたのです。
言葉も文化も違いますが、
スキンシップが豊かでフレンドリーな国ですから
身振り手振りでどんどんとけ込んでいきます。
そこで「あっな〜んだ、親がいなくてもやっていけるじゃない」と
気がつくのだといいます。
「親がいなければ何もできない」と思っている
呪縛から解き放たれ、自立したい気持ちが芽生えるのです。
親がなんでも手を差し伸べ過保護にやりすぎることが
仇になることがあります。
ですからアメリカに行くときも藍工房の暮らしも
親御さんからのお手伝いはすべてお断りしてきました。
子供達はどうしても親の目を気にしてしまい
「本当の自分が出せない」からなのです。
「好きなことすればいいの。スカートめくりしてもいいし、
つまみ食いしてもいいのよ」と竹ノ内さんはいいます。
裏表のない“素”の自分を出せるようになって欲しいのです。
・・・・たくさんのお祝いのお花をいただき、お礼状を書いているはるかさん・・・・
・・・・次の目標はパリに藍工房を作ること。
願いを込めた作品『セーヌと藍工房の家』・・・・
家族からは「よけいなことを…」
「竹ノ内さんは障害者の子供を持っていないから、
わからないのよ」と、避難を受けたこともあったようです。
でも親御さんには、子供が帰ってきたときの顔だけを
見て欲しいといいます。
ニコニコした幸せそうな顔なのか、しぼんだ顔なのか…
それがその日、1日の答えなのですから。
『つなぐ通信』Vol.4でご紹介した工藤はるかさんの夢は、
素敵なレストランのウエイトレスになることでした。
藍工房での作品の評価も高いはるかさんでしたが
ウエイトレスの夢を諦めることができませんでした。
初めご家族は「ウエイトレスなんか…」と思っていたようです。
海外の素敵なレストランを知っていたはるかさんは、
一流レストランの仕事を探す努力を続け、
ついに厳しい条件の銀座のレストランで3年8カ月働きぬきました。
そして竹ノ内さんはフレンチレストラン『アンシェーヌ藍』を作り
はるかさんの夢へ大きなプレゼントをしたのです。
・・・・カゴ染めのハンカチの作品を見せてくれる、はるかさん・・・・
・・・・こちらは非売品のお皿。大好きなお友だちかな?・・・・
竹ノ内さんは、精神障害で入院している方を
グループホームに引き取り生活訓練をし
その後ワンルームマンションで自炊もできるようにします。
そこから「藍工房」に通って制作をする方もいれば、
スタッフが社会復帰の職場探しを手伝い
社会へと送り出すこともあります。
結婚した方もいらっしゃいます。
はるかさんの次の夢は“結婚”です。
「自信をつけたら就職してね」
「就職して、もしつぶれたら帰ってきてね」
「戻れる場所があるから安心してね」
ここはあくまでも通過地点。
だけど帰って来れる自分の家でもあるのです。
藍工房に集う一人ひとりが「家族」なのですから。
【文・写真:成田典子】