つなぐ通信:人や文化をつなぐカルチャーマガジン

60年後の絵日記が、つなぐもの…

投稿日: 2013/06/24

『つなぐ通信』夏号の特集
「手書きの力・継続の力」で伝えきれなかった
絵日記のことを少し書きたいと思います。

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・・・・・・『つなぐ通信』夏号の表紙にもなった絵日記
(写真:貝塚純一カメラマン)・・・・・・

今年の3月に、ボストン在住の和子さんが
たくさんの絵日記を包んだ風呂敷を抱え、
コピー機を貸して欲しいとスタッフの事務所を訪ねてきました。
この絵日記は60年ほど前に
当時小学生だった次兄と三兄が描いたもので、
たまたま和子さんがボストンに持ち帰っていました。

今回は病気入院中の長兄のお見舞いに帰国したのですが
何か長兄を元気にするものがないかと考え
この絵日記の存在を思い出し、持ち帰ったといいます。

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・・・・・・62年前、生まれたばかりの和子さんの様子を
次兄が絵日記に書きました。赤ちゃんは自宅で出産して、
産婆さんが赤ちゃんをお湯に入れてくれているのでしょうか。
初めて妹ができた感動、愛おしさが伝わってきます・・・・・・

この絵日記を偶然見た編集部の一人は
一目でこの絵日記の虜に。
取り憑かれたようにページをめくり始めました。
そこには昭和の家族の暮らし、兄弟たちの遊び、
学校の行事、祭りや季節の行事などが
実にいきいきと描かれているのです。

和子さんの故郷は、滋賀県多賀町。
多賀大社を中心に古くから神事が盛んなところで
お祭りや季節の行事、風習などを大切にしながら
兄4人と和子さんの5人兄妹、
そして両親と祖父母の大家族で楽しくにぎやかに
暮らしていました。
お父様は歯医者で
3人の兄たちも歯医者の道へと進みましたが
その後それぞれバラバラの地に散ってしまい
多賀町の実家にはどなたも住んでいません。

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・・・・・・次兄の絵日記です。自分と長兄が
赤ちゃんの手を引いて、おばあさんに彦根に
連れて行ってもらったことが描かれています。
「よいこ三年生」を買ってもらったこと、
夏の甲子園の決勝で平安高校(京都)と
熊谷高校(埼玉)が戦い、自分たちの地域の
代表の平安高校が勝って嬉しかったことが
書かれています。昭和26年の夏のことです・・・・・・

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・・・・・・4月22日の古例大祭(多賀まつり)で、
友人が馬に乗って「本渡り」をしたことが
描かれています(左ページ)。お祭りの前日は
お餅をついたりごちそうを作った様子を。
自分はぜんざいを作る手伝いをし、
お兄さんたちはお掃除のお手伝いをしたと、
子どもたちのお手伝い振りが書かれています(右ページ)・・・・・・

今回、長兄は和子さんが持ち帰った絵日記をみて
大変喜ばれたといいます。
忘れかけていた、子ども時代の楽しい暮らしが甦り
数十年のブランクも一気に縮まりました。
もうここは多賀町、そこにいるのは小学生のお兄さん。
楽しい会話がはずみます。
おそらくタイムマシンで60年前に戻ったような
気持ちになったのではないでしょうか。

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・・・・・・高宮橋に遠足に行った様子です。
「たんぼには あおいあおいむぎばたけや なのはなが
きれいにさいていました。たかみやばしのさくらは
まんかいです。」と、桜や菜の花の美しい光景が
見開きで描かれています。1ページでは描ききれない
くらいの景色だったのでしょうね・・・・・・

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・・・・・・左上の絵日記。
左ページは運動場でラジオ体操していたら金魚売りさんが
学校に来たので「せんせいが、こうてあげましょうと
おっしゃいました」と、おおらかな当時の
学校生活が伺えます。
右ページは妹の和子さんの絵です。
「かずこちゃんのおくちに
かわいらしいはが二本はえています。
えいせいぼうろをあげると じょうずにたべます。
かずこちゃんといって あやしてあげると
よくわらいます」と、妹をかわいがっているようすが
よく伺えます。「衛生ボーロ」懐かしいですね♪・・・・・・

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・・・・・・8月10日の絵日記は、
お盆が近づいたので、仏壇の掃除を始めた
おばあさんのお手伝いした様子が描かれています。
真鍮磨きを買ってきて、庭にゴザを敷いて弟と一緒に
真鍮の仏具を力いっぱい磨いたと書かれています・・・・・・

小学生時代、多くの人が絵日記を描いたはず。
今、その絵日記はどこにいったのでしょうか。
当時どんなことを描いたのか…
和子さんが持ち帰ったこの絵日記を見た時に、
自分の描いた絵日記に会いたくなりました。
当時の自分に会ってみたいと思いました。
もし、まだ手元にあるなら、
それは大切にとってくれていた親に感謝感謝です!
お母様、ぜひお子様の絵日記は大切に保管してあげてください。
その大きな価値は、きっと50年後、60年後に必ず分かるはず。
 
 
【文・写真:成田典子】

カテゴリ:取材秘話・裏話の投稿 | コメント(1)

One Response to “60年後の絵日記が、つなぐもの…”

  1. 近藤博子 より:

    昔(子供の頃)は、TVもなかったのでよく縁側で、庭の鶏やお花の絵を描いていたのを思い出しました。あのころの絵は、もうどこにも残ってないと思います(・_・;) ちょっと残念な気持ちになりました。
    子供達の絵は物置にありますから、子供達がおじさん・おばさん?!おじいさん・おばあさん!!になるまで、そっとしておきましょう(^.^)

    読んで、とっても大事な頃に、タイムスリップしました。

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