若狭のおもてなしVol.1【早瀬・寺川商店】
投稿日: 2014/12/15
『つなぐ通信』Vol.8冬号は、念願の地方特集が実現。
訪ねたのは福井県の若狭地方。
海の幸・山の幸・湖の幸に恵まれ、
歴史と文化に育まれた若狭路。
そこには美しい自然と美味しい食べ物、
そして温かな心と “おもてなし”がありました。
誌面だけでは伝えきれなかった
若狭の魅力をお伝えします。
「できたら朝ご飯を食べないで来ていただきたいんです。
お腹いっぱい食べていただきたいんです」
東京を出発する前に、取材予定の
美浜町早瀬の鮮魚店「寺川商店」の寺川徹さんから
ビックリするようなお昼ご飯ご招待のお電話をいただき、
若狭の取材旅行がスタートしました。
編集長・成田、副編集長・首藤、デザイナー・辛嶋の
3人は、新幹線〜北陸本線〜小浜線を乗り継いで
美浜駅に到着。タクシーで早瀬に向かいます。
東京から3時間少しで着いてしまうから驚きです。
しかし貝塚カメラマンは、撮影機材を
車に積んでいくので、7〜8時間の長旅。
初めての長距離運転に不安いっぱいの一人旅です。
・・・取材用の撮影。寺川徹さん!(貝塚カメラマン撮影)・・・
「殺風景なとこですけど、スタッフのみなさんに
お昼をお腹いっぱい食べていただきたいんです」
お魚屋さんのお昼のご招待を、断る理由はありません。
電車組スタッフは大喜び!
「お言葉に甘えて!」と、
お腹を空かした女性3人は、寺川商店にまっしぐら。
店の奥のテーブルに所狭しと並べられた魚づくしに
「すご〜い!!」と舞い上がります!
1品か2品が普通なのですが、
フグやカマスなど干物は3〜4種類、煮付けも2種類、
お刺身も3種類くらいあります!
まずは各々撮影会をして、
早速、徹さんとお母さんの文好子(ふずこ)さんと
一緒に「いただきま〜す」。
・・・これはホタルイカではなく
スルメイカの子の煮付け。とても珍しいです!・・・
・・・手前はカレイの煮付け、奥は一見キャラブキの
ようですが、実は芋がら(ズイキ)。
これが美味しいんです!・・・
このお昼ご飯は、ご自分たちの食べる、
いわゆる「まかない料理」のようですが
これが徹さんのおもてなし!
漁町早瀬の家庭の味を食べて欲しいという
粋な計らいです。
干物はもちろん手づくりです!
・・・この軽く干して炙ったアオリイカが
とっても美味しいんです!・・・
・・・徹さんは、私たちにこうしてイカを裂いて
手渡ししてくれるんですよ♪
みんなすっかり徹さんファンになってしまいました!・・・
ひたすらひたすら食べまくりました!
「遠慮しないでご飯オカワリしてくださいね」と
おっしゃっていただいたのですが
遠慮は全くしませんが…
さすが食べ盛りを過ぎている乙女(?)たちは
ご飯1杯でギブアップ!
「ごちそうさまでした!」
しかし、徹さんの「おもてなし」は
まだまだ終りません。
夕方、ご自分の仕事が終ったら、
早瀬を案内してくださったのです。
なんと徹さんはかなりの歴史通。
読書はもちろん、時間を見つけては
名所旧跡を訪ねたり、勉強会にも出かけます。
特に美浜町早瀬が大好きで、早瀬の歴史に詳しい!
徹さんが案内してくれた
早瀬探訪の話は次回にして、
もう少しお魚のお話を…
寺川商店の取材のテーマは「鯖」です。
取材は次の日行われました。
昔から若狭の鯖は、「若狭もの」と珍重され
あの魯山人も絶賛したほど脂がのって旨いのです。
若狭から京都へ鯖を運ぶ道は「鯖街道」と呼ばれ
熊川宿などの宿場町もできました。
鯖は鮮度がすぐ落ちやすい魚ですが、
若狭の人はおいしい鯖の食べ方を知っています。
そのひとつが、糠漬けにした保存食の鯖の「へしこ」。
鯖を割って、内蔵を取り出し、塩漬けにしてから
糠や調味料を入れて本漬けです。
寺川商店の「へしこ」づくりは、
2月や3月の寒い時期に始まり、半年以上熟成させます。
地元でも定評がある美味しい「へしこ」です。
・・・お腹に糠がびっしり詰められた樽出しした「へしこ」・・・
「へしこ」はお漬け物と同じで、
昔から「各家庭の味」があったようです。
今は家庭で「へしこ」を漬ける人は
ほとんどいなくなりましたが、
各工房や工場では「企業秘密」といわれる
製造法や、独自のタレがあります。
寺川商店の「へしこ」は、
数年前に亡くなった徹さんのお父さんが研究したもの。
「へしこ」は越前地方でも漬けられていますが、
越前は塩辛いようです。
若狭の「へしこ」は、旨味が熟成され
美味しいと評判です。
・・・今日の「へしこ」の担当は大谷富枝さん。
樽出しした「へしこ」を真空パックにします・・・
寺川商店の「へしこ」は、
焼くと本当にきれいな飴色になり
お茶漬けにしたり、ご飯と一緒に食べると、
本当に美味しい!ヤミツキになります。
食べる分だけ2〜3cmくらいに小さく切って
軽く炙る程度です。
生で薄くスライスして、大根をはさんで
お酒のあてにしたり、
握り寿司にしたりもしますが、
焼いてちょっとずつ食べるのが
一番美味しいような気がします。
「へしこ」は発酵食品としても、
また血液サラサラ効果があるといわれる
EPA(エイコサペンタエン酸)や
DHA(ドコサヘキサエン酸)が
鯖に多く含まれることでも再び注目されています。
しかし塩分が多いので、食べ過ぎには注意かも知れません。
寺川商店にはもうひとつ、
糠漬けのヘしこをさらに酒粕に漬けたものがあります。
糠漬けよりも味がマイルドで上品な感じです。
これも徹さんのお父さんが開発したものだそうです。
「へしこ」の調味料のお酒や使用している酒粕は
地元の三宅彦右衛門酒造の銘酒「早瀬浦」です。
これがまたおいしいお酒なのです。
普通の糠漬けのへしこは1本1,500円。
酒粕のへしこは1本1,800円です。
以前は、脂の乗った
ノルウエー産の鯖を使っていましたが
最近は、八戸沖で獲れる
脂の乗った最良な鯖が手に入るようになり
国産に切り替えたといいます。
そして、1本の鯖を竹串に刺してじっくり焼く
「焼き鯖」も若狭の名物です。
特に美浜町や小浜の焼き鯖が有名で
祭りの時やおもてなしの「ハレの食事」として食されます。
スーパーなどで売っている鯖とは別物。
塩鯖とも違います。
これを生姜醤油で食べるのですが、
本当に美味しい!
この大きな焼き鯖が、寺川商店では1本1,000円です。
焼き鯖としてはかなり安い方だと思います。
・・・寺川商店の焼きたての鯖は、
布絵作家の渡辺弘子さんのお宅でいただきました!・・・
この日、徹さんはあの美味しかったアオリイカを
干しているところを見せてくれました。
このあと、地域医療で活躍している
名田庄診療所の中村伸一先生を取材予定でしたが
「車の中で食べていってください」と
干したてのアオリイカを焼いてくれ
もたせてくれたのです!
それも一人1枚ずつ!!
徹さんの優しさをお腹いっぱいに
次の取材先、名田庄診療所に向かいました!
寺川商店のみなさん、ありがとうございました!
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【文・写真:成田典子】