みんながファンになった「奥田染工場」の奥田博伸さん
投稿日: 2013/03/21
・・・・『つなぐ通信』創刊号の「工場・工房探訪」・・・・
『つなぐ通信』創刊号の取材では、
魅力的な方達の出会いが多くありました。
「工場・工房探訪」で取材した八王子の「奥田染工場」の
奥田博伸さん(34歳)もその一人です。
2年前に亡きお父さんのあとを継いで
プリント工場の四代目の社長に就任しました。
奥田さんはカメラシャイで、写真を撮られるのが大の苦手。
私たちはそのことを知っていましたが、
奥田さんの写真をドーンと
誌面のトップに持ってくることを企画していました。
今回は、父から息子へと“つながれた”工場の取材。
主役は息子の奥田博伸さんであり、
それだけ魅力的なキャラクターを持っているからです。
・・・・タオルを頭に巻いている奥田さんのいつものスタイル・・・・
奥田さんは今まで、どんな取材のときも写真に撮られるのが嫌で
逃げ回っていたといいます。
私たちの提案に、はじめはためらっていましたが、
しょうがなく(?)OK。
頭にタオルを巻くのが、いつもの奥田さんの
ワーキングスタイルですが
私たちは「手ぬぐいを外してもらえませんか」と、さらにプッシュ。
奥田さんの髪の毛は年齢のわりにはかなり白く、
量がとても多く、奥田さんはそれをあまり好きではなかったようです。
少し太ってきたこともかなり気にしていました。
しかも写真に撮られることを予測していなかったので
着ているものは染料だらけ…
しかし、私たちはそういう姿にとても好感を持っていました!
みんな一目で好きになったのですから、
「それがいいんですよ!」と、勝手なものです。
・・・・工場ではテキスタイルデザイナー近藤政嗣さんが制作中。
撮影しているのは貝塚純一カメラマン・・・・
・・・・工場はまるで迷路。錆びた金属、割れたコンクリート、朽ちた戸板
あちこちから蒸気が吹き出している様は、さながら映画『ウォーターワールド』のよう…・・・・
奥田さんはこんな無理なお願いに観念したのか
恥ずかしそうに、とても髪の毛を気にしながら…
「少し待っていただけますか」と、水道の蛇口をひねり
いきなり髪の毛を水で洗い始めたのです。
お天気がいいとはいえ、まだ2月の半ばです!
「あっ〜、そこまでしなくても!!」と、私たちは焦りましたが
あっという間にドライヤーで乾かして、いざ撮影に。
・・・・刷り終えたシルクスクリーンを洗浄しています。
テキスタイルデザイナーの近藤さん(左)と、ベテラン職人の古谷さん(右)・・・・
・・・・奥田染工場は、有名デザイナーのテキスタイルを数多く制作しています。
工場には「お宝」のような落書きも!・・・・
・・・・ここはクリエーターが集うワンダーファクトリー!
落書きもいたずらもアートのよう!・・・・
カメラマンの貝塚純一さんは、腕がいいばかりではなく
人柄も抜群で、きっと奥田さんも
「この人だったら写真を撮られてもいい」と思ったのかもしれません。
あとはトントン拍子に、とってもいい写真を撮ることができ
奥田博伸さんのメディアデビュー写真が出来上がりました。
(内容はぜひ誌面でご覧ください)
おかげさまで、この写真は大好評。
奥田さんも気を良くしてご自分のfacebookに写真をアップされていました。
写真を撮られるのは苦手ですが、
気に入った写真をみなさんに見てもらうのは決して嫌ではないとか…
もしかして奥田さんは今回の取材をきっかけに、
自分の「苦手」の殻をひとつ
打ち破ろうとしたのではないかと思いました。
・・・・誰が貼ったのか「エアコン求む!」。夏の工場内は蒸し風呂状態のよう!・・・・
・・・・継ぎ足し継ぎ足しの工場は、秘密の隠れ家のようにワクワクします。
デザイナーや学生インターンが集う、学びとクリエーションの夢工場。
外に出した机は事務所兼、作業場?・・・・
工場では、お父さんの代からのベテラン職人の古谷さん(77歳)を筆頭に
若手クリエーターや、美大や専門学校からのインターンの学生さんが
テキスタイルを制作しています。
アパレルメーカーも、デザイナーさんが直接工場に訪れ
職人さんと一緒に互いに刺激し合いながら制作しています。
「デザイナーも職人もお互いの“心”に触れないと
創造はできない」というのが亡きお父さんの哲学。
それを受け継ぎながら、さらにもの作りの意識を上げていきたい
という奥田さんの「つなぐ」への想いが
もうひとつ上に、自分を押し上げようと
したのかもしれません。
【文・写真:成田典子】