投稿日: 2018/05/15
『つなぐ通信』Vol.18「八王子特集」は、奥田染工場の奥田博伸さんが立ち上げた八王子の「つくるのいえ」のプレオープンイベントが大きなきっかけでした。
「岡山産地とコラボしたイベント」と聞き、
「岡山」にビビッと反応!
何しろスポンサー企業の地元。面白いネタが探せるかもしれないと、編集長の成田とデザイナーの辛嶋がイベントに出かけたのは、クリスマスムード真っ盛りの昨年の12月23日。
⬆今年の2月末、「つくるのいえ」にまつわるみなさんが集まってくれた集合写真。ここにいらしているほとんどの方が、プレオープンイベントにいらしていたんですね。遡ってみて、いろんなことがわかってきました・・・(写真:大社カメラマン)
⬆「つくるのいえ」プレオープンイベントのフライヤー。盛りだくさんの内容です!
⬆「つくるのいえ」は、元機屋(はたや)さんだったお家をリノベーションしたものです。立派な庭があるのですが、今は寂しい状態。いろんな植物を植えたらもっと素敵になると思います。家の前には、たこ焼きやスープ屋さんのワゴン車など、おいしいもの屋さんも登場しました!
「つくるのいえ」のある中野上町の近くには、奥田染工場があり、ここは5年前の創刊号で奥田さんを取材した懐かしい地域。当時は「中野上町」や、近くを流れる「浅川」が八王子にとって大きな意味を持つことなどつゆ知らず、関心も向けてはいませんでした。おそらく地元住民である奥田さんもそうだったのではないでしょうか。それが八王子にとってとても重要な地域であり、特別な意味を持つ地域になったのは、「織物の町・八王子」の奥深い歴史を知ったからなのです。その話はまた後日として、まずはイベントの様子をご紹介します。
⬆手前にあるのは、岡山の石井織物工場の生地に、浦上染料店の「梅墨」を使い、奥田染工場で擦り上げたタペストリー。正面で、チャイナ服を着て一際目立っていた男性が、今回取材のキーマンともなった小俣能範(おまたよしのり)さん。八王子で有名な「うさぎや」という靴屋さんの店主で、街おこしに尽力されていた方でした。もちろん、この時はこんなつながりになるとは知る由もありませんでした。しかし、八王子が江戸の町づくりにいかに貢献したかは、しっかり私たちにアピールしていました。
⬆奥田染工場で製作中のタペストリー(写真:奥田さん提供)
岡山といえば、倉敷市児島地域の「帆布(はんぷ)」や「デニム」が有名です。この地域は江戸時代には、刀の柄(つか)に巻いたとされる「真田紐(さなだひも)」や、帯や袴地の「小倉織(こくらおり)」など、緻密で丈夫な織物を得意としていた産地で、その技術を活用したものです。
⬆手前の傘は吉祥寺の「イイダ傘店」。イイダヨシヒサさんも、傘生地が八王子とご縁があり、今回の取材に登場することになりました。Vol.2以来の5年ぶり2回目の登場です。
⬆岡山の「丸山刺繍」に依頼した生地を使用した東京のデザイナーの製品。
岡山からは、国内の帆布生産の70%を占める「タケヤリ」や、サンプル染めや天然染め工房の「浦上染料店」、日本でも数少なくなったレース機で製織されるエンブロイダリーレース(刺繍レース)の企画・販売をしている「音の絵」、デニム製品の企画・販売の「EVERY DENIM」が参加。
また、優れたギャバジンとタッサーの綿織物の工場「石井織物工場」やエンブロイダリーレース工場の「丸山刺繍」の岡山の工場も紹介され、東京クリエーターとコラボした製品も展示販売されました。
⬆「音の絵」のデザイナーの間野菜々江さん。この時はまさか2月に岡山で取材することになるとは夢にも思っていませんでした。とても控えめなやさしい方でした。
⬆イベントでは編集長が赤い吾亦紅(われもこう)の刺繍柄のブックカバーを購入。間野さんも身につけていた生地です。とってもお気に入りのブックカバーになりました。
⬆間野さんのエッセイ『夜中にミシンを踏みながら』。この時は購入しませんでしたが、その後気になり、Amazonで購入。間野さんの人柄や温かな心が伝わる素敵なエッセイでした。『つなぐ通信』の読者プレゼントにご提供いただきました。
この日の16:30からは岡山産地の方のトークショーが開かれました。岡山産地からは「浦上染料店」2代目の浦上俊二さん、「タケヤリ」リテールディビジョンの大岡千鶴さん、「音の絵」の間野菜々江さんが参加。この3人には、2月に取材させていただくこととなりました。そして、もう一人は、クラウドファンディングを活用し、岡山のデニムで起業した「EVERY DENIM」の山脇耀平さんが参加。聞き手は奥田さんと、奥田さんの『つくるのいえ」のパートナーでもある「DEED FASHION」の近藤弘一さんです。このあたりからとにかく奥田さんの周りには、たくさんの人が登場し、さすがの私たちも覚えきれず、取材が決まった時には、相関図を書いていただきました!
⬆岡山産地トークイベントには、たくさんの若い方が集まりました。右奥が「タケヤリ」の大岡さんと「浦上染料店」の浦上さん。岡山弁で飾り気のない話をする浦上さんに、みなさん真剣に聞き入ったり爆笑したり。
⬆右端から「DEED FASHION」の近藤さん、「音の絵」の間野さん、「EVERY DENIM」の山脇さん、「タケヤリ」の大岡さん。
⬆左のブルーのダウンを着ているのは、浦上さんの息子さん。赤いダウンの女性はスタッフの方。岡山からみなさんでいらして、ワークショップやトークイベントに参加です。
⬆2月の岡山取材の時も、お会いしました!実はこの時は、トークイベントにいらしていた息子さんたちとは気がつかず。失礼いたしました〜。(写真:大社カメラマン)
⬆トークショーの後は、岡山の皆さんとの交流会が開かれました。この時は知りませんでしたが、後で取材に参加してくださったイラストレーターのpecoさんや、「つくるのいえ」や『つなぐ通信』の目次イラストを描いてくださった、Yamamoto Harucaさんもしっかり写っていました!
⬆浦上さんが持ってきてくださった岡山のおいしいタコや牡蠣などを使った料理が並び感激です!
⬆お料理を作ってくださったのは、新米料理研究家のチャビーさん。まだこの時はキッチンに湯沸かしもない状態で、寒く大変な中を早くから料理の準備をしてくれていたようです。みなさん、ありがとうございました!ちなみに、奥田さんはあきる野の「キッコーゴ」さんのお醤油を愛用していました。「八王子の人間はみんなキッコーゴですよ!」と、得意げでしたよ〜!
⬆奥田さんが、「つくるのいえ」の修理に大活躍の本橋幸太さんを紹介してくれました。庭師で大工仕事までこなす頼もしい助っ人。人との絆やつながりを大切にする、男気のある方で、今回の特集にも登場しています!
⬆Harucaさんが描いた「つくるのいえ」のイラストに登場するのは、みんな奥田さんにまつわる方達です。みんなが「つくるのいえ」誕生に力を貸してくれました。そこには亡くなったお父さんや職人さもいらっしゃいました。(イラスト:奥田さん提供)
⬆文字が読めないかもしれませんが、奥田さんが送ってくれた今回の特集に関連する方達の相関図です。奥田さんとつながっている方達への感謝の気持ちが伝わってきます。
⬆12月23日の食事会の後で、撮った集合写真です。この数カ月で随分お知り合いが増えました。「おじいちゃんの古希のお祝いの写真のようだね」とは、浦上さんの感想(笑)。(写真:奥田さん提供)
そしてこの出会いがきっかけでスタートした『つなぐ通信』Vol.18「八王子特集」。このあと岡山取材も実現することになりました。次回は、誌面が少なくて伝えきれなかった岡山取材日記がスタートします!まだまだ続きますので、今後もお楽しみに!!
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【文・写真:成田典子】
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投稿日: 2018/01/10
「押上よしかつ」取材日記第2弾です!
⬆️「よしかつ」の取材は、諸事情で延びて10月24日に決行!
店主の佐藤さんがしっかり時間を取ってくれたので、
大社(おおこそ)カメラマンとデザイナーの辛嶋さんは、
照明もセットしてかなり丁寧に撮影。
とてもきれいな写真に仕上がりました。
⬆️「よしかつ」では食材の他にもグラスやお皿なども
東京産を採用しています。
このガラスは、新島の岩を溶かして作ったもの。
少し緑味の天然の色もきれいで、厚みもしっかりしていて、
普段使いに欲しいとスタッフも惚れ込みました。
木の皿は檜原村の木材。
焼き物は江戸川区小岩の土で焼いたものです。
店主が偶然に出会って気に入ったりすると
採用しているようです。
⬆️「よしかつ」のお肉はブランド豚である
「トウキョウX」をはじめ「セレブ有難豚(ありがとん)」
が使用されています。聞きなれない「セレブ有難豚」ですが、
そもそもは宮城で放牧飼育されていたものが、
東日本大震災で飼育できなくなり、東京世田谷の放牧場で
飼育されることになった経緯があります。
店主の佐藤さんもブログで
「東京都世田谷区育ちセレブ有難豚は美味しい!」
というタイトルで紹介しています。
こちらもぜひご覧ください。
あまりにも物語があり、豚ちゃんも可愛いので
ちょっと食べるのが複雑な気持ちですが、
感謝して美味しくいただくということで・・・
⬆️撮影時に用意していただいた
江戸東京野菜や東京地場野菜などの「東京野菜盛り合わせ」。
野菜の長さや形がわかるように、
あえてそのままを残しています。
左から伝統小松菜の「後関晩生(ごせきばんせい)小松菜」
足立区の「つるな」のおひたし。
シャキシャキした食感を味わってほしいと、
あえておひたしに。
ポテトサラダは、檜原村の伝統野菜「おいねのつる芋」。
中に入っているハムは「セレブ有難豚」。
自家製マヨネーズは「さくらたまご」を使用しています。
白いのは亀戸大根。“おかめ”の形をしている
大根葉も添えています。
そして早稲田ミョウガの酢漬けです。
この説明を聞いているだけでも楽しいんです♪
⬆️今が旬の「滝野川ゴボウ」で新作メニューも
作っていただきました。
この滝野川ゴボウは、今回取材させていただいた農家の
岸野農園さんのものです。
歯が悪い方でも美味しくゴボウを食べていただこうと
ゴボウをミキサーにかけて、かつおだしと酒と醤油で
味付けし、ゼラチンで固めたもの。
ゴマをかけても美味しく、ゴマは瑞穂町産という徹底ぶり。
江戸の料理本にも載っている「滝川」という料理です。
ゴボウが濃厚でとにかく美味しい!!
これをパンやクラッカーに乗せて食べても
美味しいなあと思えた絶品。
人気メニューになること間違いなしです!
⬆️今回大活躍の大社カメラマン。
撮影が一段落して、撮影した料理を夢中でパクパク。
手前にある赤酢と、檜原村のはちみつは編集長が購入。
このはちみつは本当に体にいいのがわかる濃厚な味!
⬆️今回撮影した一部。食用の「つばき油」は
カルパッチョなど、オリーブ油と同じ感覚で使います。
酸化されにくく固まりにくいオレイン酸が
オリーブ油よりも多く、独特の香りがあります。
⬆️店内には本棚があり、手に取りたくなる
江戸、東京にまつわる本がいっぱい!
⬆️店内撮影の後には、愛車のバイクに乗って出かける
シーンを撮ろうと準備しているところに、
奥さんの佳子さんが到着。早速、ツーショットを!
(撮影:大社カメラマン)
⬆️仕上げは、スカイツリーに向かって
走っているシーンの撮影!
交通量もあるので、何回かぐるぐる回っていただき、
かっこいいシーンが撮影でき、
本日の撮影がすべて無事終了!!
佐藤さんもこのシーンは
とても気に入っていただいたようで、よかったです。
長時間に渡り、ご協力ありがとうございました!
今度はスタッフとゆっくり伺いますね〜!!
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【文・写真:成田典子】
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投稿日: 2017/12/15
店主が自分の足で探し回って集めた
ほとんどが東京食材を使用した居酒屋さんが
押上にあると聞いて、9月27日に
編集長・成田、副編集長・首藤が事前取材
(単に呑みに行きたかった?)に出かけました。
駅から近いところなのに方向音痴の二人は
迷いに迷って途中でタクシーを拾って到着!
そんな珍道中から始まった「押上よしかつ」の
事前取材の話から・・・
⬆️店主の佐藤勝彦(かつひこ)さんと奥さんの
佳子(よしこ)さん。
「よしかつ」の名前は、お二人の名前をとったもの♪
(写真:大社カメラマン)
⬆️押上の駅を降りると目の前にライトアップされた
巨大なスカイツリーが!
これだけでテンション上がります!
⬆️店はかつてメリヤス工場だった佳子さんの実家。
東京の下町はニット工場が多かったのですが、
いまでは随分少なくなりました。
店の前には東京の地酒や、江戸東京野菜などの
幟(のぼり)がたくさん。
店の前にある車やバイクでいつも仕入れに出かけます。
飾りっ気のない入り口が、店主の気質を物語るようです。
⬆️入り口には「東京を食べよう」という看板があり、
その奥には「緑提灯」が掲げられています。
「緑提灯」は、国産自給率をあげようと、
小樽から始まった運動で、国産や地場産品を
50%以上使っている店に掲げています。
★の数で使用量がわかるようになっていますが、
あくまでも自己申告。
「よしかつ」ののれんは、店主が江戸東京野菜の一つである
檜原村(ひのはらむら)の伝統野菜「おいねのつる芋」を
デザインして、檜原村の「染工房シゲ田」さんで
染めてもらったもの。
のれんに店の名前を入れなかったのも、
店主のこだわりのようです。
⬆️店主の佐藤さんは、いきなり訪ねた私たちにも丁寧に
いろんなことを説明してくれました。
「よしかつ」では東京産がない場合は、
原材料が国産のものを使用します。
植物油には、菜種油、大豆油、コーン油、サフラワー油、
ゴマ油、こめ油などがありますが、唯一国産原料で製造
しているのがこめ油(米ぬか油)。
しかしこめ油も米ぬかが韓国とか東南アジアなどの
輸入物があるので注意。
「農協のものは間違いなく国産品です」と、
教えてくれました。
⬆️お店は、基本的に奥さんの佳子さんと二人で
やっています。佳子さんは割烹着に着物姿の
下町のおかみさんスタイルがよく似合います。
⬆️何はともあれビールから!オススメ頂いたのは
「TOKYO BLUES」と「TOYODA BEER」
どちらも日本酒の「多摩自慢」で知られる
福生の石川酒造で製造されているものです。
2つともすっきりした今のビールとは違う、
レトロな味というか・・・複雑なコクや苦味がある、
なんとも言えない大人の味わいです。
⬆️「TOKYO BLUES」は、コクと香りを出す
レイトホッピング製法で造られたクラフトビール。
多摩自慢の仕込みにも使われる
秩父山系の伏流水を使用したものです。
⬆️「TOYODA BEER」は、明治19年(1886)
日野市にあったビール工場で造られていた
多摩地域最古の銘柄を復活させたもの。
地元で大麦を栽培し、下面発酵で低温で、
ゆっくりと約ひと月かけて醸造したものです。
麦踏み体験など地元小学生なども巻き込んで
町おこしにも一役買っているようです。
⬆️次は何といっても日本酒でしょ!
オススメ頂いたのは秋が深まるこの季節ならではの
「ひやおろし」。「多摩自慢」のひやおろしと、
福生の田村酒造場の「黄泉」のひやおろし。
水が良いせいか、福生には酒造が多いようです。
美味しい日本酒だったので、おかわりも!
⬆️「よしかつ」の自慢は、東京の島嶼(とうし
ょ)の島焼酎がふんだんに揃っていること。
大島から八丈島、青ヶ島、地図に入りきれない
小笠原諸島の父島や母島などの焼酎や、ラム、
リキュールなども。
東京で青ヶ島の「青酎」が全部揃っているのは、
青ヶ島の居酒屋と「よしかつ」くらいと自負。
残念ながらこの日は焼酎までたどり着けず、
飲むのは次回を楽しみに♪
⬆️お酒のストック棚には珍しい焼酎がずらり!
⬆️店主の佐藤さんは、ワインのソムリエから、
日本酒の唎酒師、焼酎アドバイザー、野菜ソムリエなど、
とにかく勉強熱心で、いろんな資格を習得。
お酒のこと、野菜のこと、東京食材のこと、
生産者さんのことなど、知識豊富なので、
わからないことはとても親切に教えてくれます。
「地産地消」を広めていくことを
使命と感じている方なのです。
⬆️テーブルには東京産のお菓子が置いています。
これはサービスで自由に食べていいようです。
嬉しい〜♪
⬆️「よしかつ」が力を入れている一つが江戸からの
伝統野菜である「江戸東京野菜」です。
店内には江戸東京野菜を描いた絵やパンフレット
が置いています。
⬆️この日は、東京食材を堪能するベーシックセット
「椿(1人 :¥1490)」を注文しました。
かなり品数があり、しかもボリュームがあるのにびっくり!
先ずは江戸東京野菜や東京地場野菜のお漬物。
滝野川ゴボウ、酢漬けの早稲田ミョウガなど。
「よしかつ」では、塩は青ヶ島の「ひんぎゃの塩」を使用。
火山の地熱を利用して結晶化したミネラルたっぷりの塩で、
にがりが多いので豆乳に入れると固まってしまうといいます。
値段は普通の塩の25倍くらいする高価な塩ですが、
(といっても大した値段ではないですが)
漬物の下地に使うととても美味しく、肉はこの塩だけでも
十分美味しいといいます。後日、副編集長は、
この塩を『つなぐ通信』の読者プレゼントに決定!
⬆️左のふわふわの卵焼きは、無添加の天然餌に
こだわった、町田市の養鶏場の小林養鶏農園の
「さくらたまご」を使用したもの。
右は、東京豆富のあんかけ。ただ東京産だけでな
く、美味しいものを選りすぐっているところがす
ごい!文句なしに美味しいです!
⬆️本日の日替わり一品は、東京産ピーマンと、
今年最後という寺島ナスを、赤酢で味付けしたもの。
江戸時代から続いているという赤酢は
初体験だったのですが、美味しくで後日購入!
バルサミコに似た感じで調理できると、
店主の佐藤さんに教えていただき、
その後我が家の台所に欠かせない調味料に!
⬆️「椿」のセットには、2品のお刺身がつきます。
この日は、八丈島の金目鯛と奥多摩のヤマメ。お
刺身は身が厚く大きく、1切れでも食べ応え十分!
ワサビは丁寧に擦った奥多摩ワサビ。そのまま食
べても美味しいのです。
⬆️「よしかつ」は、もともとは墨田区鐘ケ淵に
もんじゃ・お好み焼きの店としてオープン。
しかし、もんじゃの店では、100%国産の食材が使えないと
いうジレンマがあり、今のような居酒屋になったといいます。
とはいえ、もんじゃももちろんメニューにあり、
テーブル席は鉄板焼きができるように。
かなりお腹がいっぱいでしたが、
やっぱり、シメはもんじゃで!
店主の人柄といい、料理といい文句無しの「よしかつ」を
『つなぐ通信』Vol.17で取材することに決定!
<つづく>
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【文・写真:成田典子】
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投稿日: 2017/07/09
『つなぐ通信』Vol.16夏号で取材した
近江湖東地域・愛荘町の麻織物メーカー
「林与」の第二弾です。
第一弾はこちらから↓
「林与」奇跡の新人デザイナー(1)
・・・林社長の自宅の庭でストールを撮影
(写真:大社カメラマン)・・・
・・・近江では、庭が立派で大きな仏壇のある
お宅が多く見られました・・・
「林与」では、受注生産だけではなく
「林与にしかできない麻織物」を発信していく
準備が整ってきていました。
数年前より、世界最高峰の麻織物を目指す
ヴィンテージアイリッシュリネンの
ハンカチプロジェクトに取り組んだり、
数千柄に及ぶ「林与」の近江上布のアーカイブ柄を
プリントとして復刻させたり、
近江・野州市の明治創業の藍染工房
「紺九(こんく)」とコラボしたリネンストールなど、
高い技術のものづくりを一つ一つ積み上げてきました。
そして今年完成したのが、
念願の「近江上布の復活」です。
・・・縁側で、アイリッシュリネンの撮影が始まりました・・・
・・・林社長の自宅の床の間には「びんてまり」が・・・
林社長が復活させた近江上布は、
伝統的な手法で作るものではありません。
「伝統工芸」になってしまうと時間も手間もかかり、
値段も高いものになってしまいます。
産地には、専門にできる職人さんも
ほとんでいなくなりました。
・・・手織りのように、一段ずつ柄を合わせて
織っていきます・・・
・・・上に乗せているのは、林与アーカイブの近江上布。
かなり見本に近づいたものが織られています・・・
・・・林社長が自分で型紙を彫って糸を染めます・・・
・・・工場の側には小さな染め場があります・・・
現代にマッチした近江上布がどうしたらできるか
試行錯誤の上で完成したのが
小ロットに対応でき、短期間ででき、
しかも値段も高すぎない、
すべてが自分ひとりで完結できる近江上布でした。
まさに、何からなにまで
自分ひとりで切り抜けてきた
林社長ならではの思考回路で創り上げた
近江上布でした。
・・・試作で織りあがった近江上布は、
5月の東京国際フォーラムで開催された
「Premium Textile Japan」でお披露目され、
好評を博しました。なんとこの展示会は林社長が多忙のため
新人デザイナーの斎藤慧理さんが、一人で出かけました。
初めての展覧会で臆せずお客さんと接している姿には脱帽です・・・
「林与」では、独自の近江上布を
自社アーカイブ柄で表現した「林与」ブランドと、
慧理さんの新しい感性で表現した慧理さんブランドの
2つで展開していく予定です。
生地だけではなく、洋服も展開していきたいと
目標はまだまだ高く設定しています。
「林与」の社長に就任してから10年近くなりますが
いろんな困難を乗り越えてここまできました。
決して手を抜かず、
時代に逆行していると思えることも
ものづくりや商売の信念を曲げず
コツコツやってきました。
今回の取材写真で林社長と慧理さんの
最高の笑顔が撮れました。
「テンション上がる〜」と、
スタッフ全員一致で表紙に決定。
表紙のコピー「苦は楽のタネ」も、
この笑顔で閃きました。
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【文・写真:成田典子】
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投稿日: 2017/06/30
待ちに待った『つなぐ通信』夏号Vol.16の取材は、
4月20日(木)~23日(日)の3泊4日で行われました。
特集に選んだ地は、
琵琶湖をシンボルとする近江(滋賀県)。
今回も編集長・成田、副編集長・首藤、
デザイナー・辛嶋の編集部メンバーと、
大社(おおこそ)カメラマンという、
オール女性スタッフです。
米原まで新幹線で行き、
そこからは大社カメラマンが運転する
レンタカーで湖東・湖北を回る、
楽しい取材旅行が始まりました。
行きたいところはいっぱい!
誌面で伝えられなかったこともいっぱい!
随分遅くなりましたが、近江取材日記のスタートです。
まずは、夏号の表紙を飾った一人
愛荘町(あいしょうちょう)の麻織物メーカー
「林与(はやしよ)」の新人デザイナー
斎藤慧理(えり)さんの話から・・・
・・・今年入社のデザイナー斎藤慧理さん。
茅ヶ崎出身。会社のすぐ近くの自宅には
趣味のサーフボードやギターが(写真:大社カメラマン)・・・
「林与」のある近江湖東地域は、
日本を代表する麻織物産地・・・
正確には“麻織物産地だった”ところです。
明治30年(1897)に、近江上布(おうみじょうふ)の
織元(おりもと)として創業し、林 与志雄社長は4代目。
ここ数年の「林与」の活躍は
『テキスタイル用語辞典』を出版している
編集長・成田が、素材展などで取材しており、
昨年より近江上布の復活に挑戦していたことや
今年入社した慧理さんの活躍のことも聞いていたので
今回の取材をとても楽しみにしていました。
・・・GWも間もない時期、「林与」の近くを流れる
宇曽(うそ)川の上には鯉のぼりが!・・・
・・・湖東地区の家は、水が上がってくることもあるので
石垣を積んだり、土台を高くした上にあります・・・
・・・「林与」の工場前に、
なにやら不思議なオブジェが・・・
取材日は、4月23日(日)の最終日でしたが、
22日(土)の宿は、林社長や慧理さんのご好意で、
会社のすぐ近くの慧理さんの家に
泊めていただくことになりました。
・・・慧理さんの家から眺めた風景。
こんなのどかなところに「林与」があるんですよ!・・・
・ ・・林社長には本場の近江牛のすき焼きをご馳走になりました。
なんと「すき焼き」は近江が発祥の地で、この辺りでは
ことあるごとにすき焼きを食べるようです。
各家では、それぞれすき焼きの食べ方があり、流儀にうるさい。
もちろんこの日すき焼きを仕切ったのは林社長!!
あまりの美味しさとお腹が空いていたのもあり、
無我夢中で食べ、「あっ写真!」と気がついた時は
もうほとんで残ってない状態。
林社長、本当にごちそうさまでした!!
最高のすき焼きでした・・・
・・・美味しいすき焼きとお酒をたらふくいただいて
年長組が爆睡していたら、どこからか「天使の歌声」が、、、
なんと、慧理さんと大社カメラマンの「真夜中のライブ」が
始まっていたのです!!実は大社カメラマンはバンジョーを演奏し、
バンドを組んでライブ活動もしている
ミュージシャンでもあるのです。
慧理さんの心にしみる歌声に、泣けて泣けて・・・
・・・翌朝は、慧理さんの手作りサンドイッチに
スタッフ大感激!仕事も忙しいのに、スタッフへの
心配りもきちんとできていて、一同すっかり慧理さんファンに!・・・
慧理さんは、今春専門学校を卒業して入社した
デザイナーです。
「林与」では、今まで職人さんを雇用したり
外国人研修生を受け入れてきましたが、
“デザイナー”を採用するのは初めてです。
昨年、2カ月ほどインターンとして「林与」で
仕事体験をし、お互いが気に入り
入社の運びとなりました。
「林与」は、有名ブランドや人気ショップの
生地を作っている、海外でも名が知られている
優れた麻織物メーカーです。
憧れを持って働きたいと希望する
若い方もいたのですが、
林社長は現実の厳しさを実感し、
「地味にコツコツ」が
すべての仕事の基本であることを
よく知っているので、人選には慎重でした。
・・・慧理さんデザインの服・・・
実は「林与」では、ほとんどの核となる作業を、
社長自らが行っているのです。
織りの作業はもちろん、
織りの前の準備(これが織物では大変なのです)、
織機の調整・修理(シャトル織機はこれが不可欠)、
展示会の準備や営業などの対応、
海外出展や輸出入の準備や手続きなど、
これらを林社長一人で行っていることを知った時は
本当に驚きでした。
しかし、これが「日本の麻織物産地」といわれた
今の湖東産地で生き残っている
麻織物メーカーの現状なのです。
ものを作れば売れる時代と違い、
今は、付加価値がないと売れにくい時代です。
小さな麻織物メーカーでは、
人を雇うことが大変で、多くは家内工業です。
ものづくりの方法も、職人的な「分業」で
大量生産する時代とは違い
発想の転換が求められます。
お客様の注文を待ってものづくりをする
「受注生産」だけでは“先”がないのです。
・・・工場には所狭しと織機が置かれています・・・
・・・織機は整備して使うものもあれば、部品調達用に
置いているものもあります。トヨタ、スズキなど
あの大手自動車メーカーの名前も・・・
全体の仕事を把握できて、職人的なこともできて
クリエーティブなこともできて、
ネットやパソコンのこと、海外取引に必要な語学、
展示会でお客様とのコミュニケーションなども出来る・・・
そんな林社長のような、考え方と能力を持つ人材など
果たしているのでしょうか・・・
そういうときに現れたのが慧理さんでした。
「奇跡や幸運がつながって、なんとか仕事も
やれている状態ですが、えりちゃんが来てくれたことも
奇跡か幸運の一つです」
林社長が語るように、慧理さんの能力は高く、
インターンのときに、見よう見まねで
1日でシャトル織機を動かして
残り糸を使ってとてもオシャレな
オリジナルのストールを織り上げてしまいました。
これには林社長も大変驚きました。
・・・たて糸を1本1本つなぐ作業は、おびただしい本数に
気が遠くなるようですが、慣れてしまえば
無意識に手が動くのだとか。
林社長がやり方を教えてくれました・・・
・・・たて糸をつなぐ作業も、難なくこなす
慧理さん。飲み込みが早く、手先も器用なようです・・・
入社してからの3カ月で
シャトル織機、レピア織機、ジャカード織機の
織りだけでなく、たて糸つなぎも、
整経(せいけい)もこなすし、検反もこなします。
こういう守備範囲の広さは、
以前働いていた職人さんや海外研修生とは
全く違うものです。
「えりちゃんは、私が負けてしまいそうなくらい
能力が高く、勢いを持っている子です。
頑張っている私を助けようと、
林与に来てくれたところもあると思います。
けど私は仕事にダメ出ししたり、
厳しくするところもあり・・・
一生懸命やってくれているのに
ちょっとかわいそうなところもあるのですが」
・・・二人は仕事の相性もいいようです(写真:大社カメラマン)・・・
慧理さんは、とても行動力がある方です。
看護師をしているお母さんを尊敬していて
高校卒業後は、自衛隊看護師になろうと入隊。
2年間頑張りましたが、ものづくりに興味を持ち、
その後文化服装学園に入り、
「林与」との出会いがあり、今日に至ります。
アメリカ留学の経験もあり、語学も達者。
パソコンにも強く、コミュニケーション能力も高く、
人に好かれる性格です。
すでに「林与の新人デザイナー」は、
業界でも注目される存在となり、
先輩たちから可愛がられているようです。
「林与」では、お客様からの注文の生地製作、
展示会の出展、新しい商品開発など、
時間がいくらあっても足りない日々が続いています。
忙しいときは休みも無し、残業は当たり前。
「ブラック企業」だ「サービス残業」と
騒いでいる時代とは、ある意味で正反対の毎日です。
しかし、慧理さんは、そういうことも
すべて理解して働いています。
林社長の力になりたいというのはもちろんですが、
「自分のブランドを立ち上げる」という
大きな目標があるからです。
この続きは次回に!!
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【文・写真:成田典子】
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