つなぐ通信 Vol.18
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花柳界を知らなかったから型破りなことができたのかも日本や地元の伝統文化が今は新しくて素敵に映るんですProle●1962年、東京都八王子出身。21歳で芸者見習いとして八王子花街に入り、2002年、置屋「ゆき乃惠」を新設。芸者を職業として確立したいと、オープンな芸者募集をしたり、きちんと確定申告を行うことを率先。「八王子踊り」の開催、節分の厄落とし行事「お化け」の復活など地元伝統芸能の保護育成にも尽力。2020年のオリンピックイヤーに向けてゆき乃惠で英会話のお稽古も始めた。写真=大社 優子 文=成田 典子Megumiめぐみさんに踊りの稽古をつけてもらう、くるみさんとてる葉さん。仕草が美しい。踊りの練習はビデオはタブーで、お師匠さんの立ち姿を見ながら覚えるのが基本という。思わず聞き惚れるめぐみさんの三味線と小唄。教えることは自分が学ぶこと。若い子から教えられることも多い。写真右/ゆき乃惠には見習いも含め9人の芸者が所属。3人が独立して置屋を構えた。写真左/右・2016年半玉デビューしたくるみさんは向島出身。左・昨年住み込みの見習い半玉となり今年デビュー予定の秋田出身のてる葉さん(19歳)。業〞として興味をもっていただけば、もっと若い人が増えていくのではないかと思ったのです。仲間を増やしたかったのです。そう思ってお受けしました。 私がポスターを貼ったり、インターネットや求人雑誌で「芸者さん募集」をしたことは、お母さんや大きいお姉さんたちを大変驚かせたようです。「芸者さん」は、あまり公に出るようなものではなかったのですね。 私はいい意味でも悪い意味でも花街のことをあまり知らなかったので、「こんな素敵な仕事を、もっと若い世代に知ってもらいたい」「もっとお客様に自分たちの稽古の成果を見ていただきたい」と、ただ思っていただけなのです。「八王子の花柳界をなんとかしなければ」というような大それた考えではなく、「八王子に芸者という素晴らしい存在があることを、もっと発信したい」という思いがいっぱいで、今に至っております。 現在、八王子芸妓組合には、21名の芸者が在籍しています。「ゆき乃惠」から巣立っていった芸者が新設した置屋が3軒あります。私がこの世界に入った時から大きく芸者数は増えてはいませんが、随分若返りました。うちにいるのは19歳から30代半ばくらいです。 くるみは今19歳ですが、早い時期から意思が固く15歳から住み込みで入り、2016年に八王子花柳界としては半世紀ぶりという半玉デビューをしました。半玉とは芸者見習いで、京都の舞妓さんと同じです。舞妓さんは16歳からお酒の席に出ることができますが、東京都では18歳からで、それを待ってのデビューでした。すぐに人気半玉となりましたが、浮ついたところがなく稽古好き。逸材だと思っています。芸者さんには、結婚し子供を生んでから復帰する人もいます。芸事やお客様をおもてなしする仕事は、若さの魅力もあれば、母になってこそ生まれるやさしさが滲み出る芸もあります。年齢制限や定年がないのですね。技術を磨いていくのが「芸」だと思いますが、芸と向き合い、自分を高めたいという気持ちがあれば、常に上を目指していけるのではないでしょうか。花柳界には、何歳になっても〝上〞が学べる環境がありますから、前向きになれるのです。 八王子の花柳会は地元との密着度が高く、みなさま驚かれますが、ご法事や金婚式、女子会などに呼んでいただき、お座敷遊びをすることもあります。距離感が近いのです。かつて織物の町・八王子を象徴した「おりゃせ節」も復活させました。地元の歌は大切にしたいと思っています。初めて知る人には古いものが新しいものです。日本のいいところをどうやって素敵に見せようかとか、常にお客様を驚かせることを考えています。お客様にダイレクトに喜んでいただけるのがこの仕事の魅力。きっとお客様に褒められたいのでしょうかね(笑)。おおやけはんぎょく置屋 ゆき乃惠http://www.aoiro.gr.jp/yukinoe/index.htm連絡先:八王子三業組合 Tel.042-622-519127TSU NA GU TSUSHIN

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