つなぐ通信 Vol.18
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「僕は〝蔵前〞を意識していました。元々ここは準工業地域。織物地帯として残っている現役工場もあり、空き工場もあります。空き工場をリノベーションしてものづくりの人たちが集まれば、ショップとデザイナーが多い蔵前とは一線を画す『ものづくり地区』として〝再生〞できると考えたんです」 小松さんのコンセプトショップがあるのは、見晴らしのいい浅川沿いの「萩原橋」の近く。この橋は明治34年に製糸業を営み財を成した萩原彦七が私財を投げ打って建設した橋に由縁するものです。ショップは、すでに廃墟となっていた同級生の実家をリノベーションしました。小中学校の後輩である奥田博伸さんの奥田染工場も近くにあります。地元の歴史が詰まっている場所です。 一見普通の民家のようですが、草刈りから始め、下水道工事からすべて1年近くかけて自分でリノベーションしました。元々建築家志望だった小松さんは、独学で建築を学び、リノベーションも手がけるようになっていました。ショップには、自身がデザインした家具と一緒に、ブラウン社の家電やオフィス機器が展示されています。これらは1950年代〜90年代に小松さんが提案したいのは、オリジナルの家具も含めてのリノベーション空間だ。あちこちに、オーディオ、コーヒーメーカー、電算機など、マニアが喜ぶブラウンの伝説家電や機器が置かれている。リノベーションは建物のいい部分はできるだけ生かす。家具1号は、木工と溶接の技術を生かした、釘を使わないシンプルな椅子。スタッキングでき、今も定番となっている。CASE GROUND〒192-0041 東京都八王子市中野上町1-30-1Tel.042-266-2600http://www.caseground.com/prole●1973年、東京都八王子市出身。店舗設計事務所を経て職業訓練校で木工などを学び、家具ブランドを2009年に設立。ディーター・ラムスを心の師にした古くもあり新しくもある家具活躍したブラウン社の伝説的なデザイナー、ディーター・ラムスが手がけたもので、小松さんは、そのコレクターとしても知られているのです。「僕はディーター・ラムスを〝心の師〞として、彼の提唱する『良いデザインの十か条』をコンセプトにものづくりをしてきました。ブラウンの製品にマッチするオーダー家具を、世界観も含めてプロダクトアウトしたいんです。ものをつくる者の責任として、50年後もデザインが古くならならない家具です。不具合が生じたら修理もするし、不要になったら買い取り、メンテナンスして安く販売します。ずっと〝循環〞する家具です。しかしなかなか手放す人はいないんですけどね(笑)」 小松さんは、この町に生まれ育った者の想いとして、地域が「ものづくり地区」として再生するための活動も始めました。まずは「中野上町」のクリエーターをまとめていくことからです。22TSU NA GU TSUSHIN

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