つなぐ通信 Vol.18
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15TSU NA GU TSUSHIN ラクな仕事なんてないよでも大変な仕事ほど楽しいね 「蜘蛛の糸だって、時間と経費を出してくれたらなんでも織るよ」 宮本英治さんのように業界に華々しい名を残してはいませんが、織物職人として渋い功績を上げているのが、岡村織物の岡村 清さん(86歳)です。織物地帯であった中野上町で創業して87年。織物工場が少なくなった八王子における、全国有数の技術をもつ現役工場であり、3代目の息子の秀基さんにもバトンがしっかりつながっています。かつて八王子はネクタイ産地で、昭和30年代はネクタイ地の生産が全国の6割を占めていたといいます。現在でも岡村織物では生産の4割がネクタイ地です。しかし、岡村織物がユニークなのは、服地や服飾地だけではなく、工業用や開発中の新繊維も、織物だったらなんでも織っていることです。「これは産業資材。親父がこういうのが好きで織っている。よそでは儲かる生地を織っている時も、儲からない割の悪い仕事をずっとやっていたんですよ」 秀基さんは苦笑しながらも、ものづくりを純粋に楽しもうとしている父親の姿がまんざらでもない様1織機にかかっているのは、ストール用の鮮やかなウールの糸。ドロッパーというスチールの棒に糸を通す作業中の岡村さん。糸が切れるとドロッパーが落ちてスチールセンサーに当たり織機が止まる仕組み。糸の数だけ全て手作業だ。岡村さんは、メガネもなしにスイスイと作業をこなす。ネクタイは15,000本の糸を経糸に使い、綜絖(そうこう)という器具に糸を通すが、これも全て岡村さんが行う。 2ネクタイ生地。 バイヤスに裁断される。3ネクタイなどを織るジャカード織機。天井を突き抜け2階まである。4綛(かせ)糸をコーンに巻いている作業。5ラメ糸、メタリック糸などさまざまな糸がシャトル織機などで織られる。カメラはプロ級の腕前の岡村清さん(右)と、経糸をつなぐ作業中の息子の秀基さん(下)。岡村織物〒192-0041東京都八王子市中野上町1-16-12Tel.042-622-1706経糸整経(たていとせいけい)した糸をビームに巻いている作業。オージーウエルネスは日本の産業の“元気”を応援しています!子。「織りの武勇伝」はたくさんありました。1964年の東京五輪に使用される、フェンシングの電子審判機用のメタルジャケットの生地を初めて織った話。使用した金属糸が汗で黒変するなどし、開発に2年かかったとか。車のシートベルト、コンピュータの基盤に使う生地、高熱炉の内側に貼る耐熱シート、古代布の復元、マクベスの舞台衣装など、様々な分野から口コミで国内外からの依頼があります。しかし試織だけで生産はしません。「挑戦するのが楽しいんです。世界中でうちしかやっていないなんて楽しいよ」。

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