つなぐ通信 Vol.18
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のコメントがネットで飛び交いました。その中のひとつ、奥田染工場の奥田博伸さんが発信した「いいものを作るということと儲かることはそもそも違う」というタイトルのブログは、多くの人の心を打ち、大きな反響を呼んだのです。「会社がダメになった訳ではないんです。業界にがっかり。やっても将来性がないんです。他にも理由はありましたけどね、厳しかったな。大体は、ひろくんが書いているようなことですよ。孤軍奮闘ではダメ。業界全体でバックアップしないとね」 〝ひろくん〞とは、奥田博伸さんのこと。奥田さんの父・正美さんと宮本さんは〝兄弟以上の仲〞でした。織物と染色という八王子産地のものづくりに携わりながら、言いたいことを言い合い、よく喧嘩もしたといいます。父・正美さんをクリエーションに目覚めさせたのは宮本さんでした。二人とも義理人情を大切にし、お金だけの安易なものづくりには走りませんでした。しかしそれは、先の時代を見据えてのことだったのです。文化・ファッションテキスタイル研究所〒192-0906東京都八王子市北野町582-11Tel.042-645-3050http://www.bfri.bunka.ac.jp/textile-lab/12講義中の宮本さん。3資料室には70年代後半から開発した全てのデータがあり再現が可能。41万点にも及ぶ様々な生地サンプル。5多重織りの透けるストール。6簡易的な板締めも開発した。7プリーツ織り。8ラグのような織物。9アレンジワインダーをコーンに巻いたもの。一見ニットのようで、どこを切っても途切れず知恵の輪のようにつながっているジョインチェック。元みやしん社員の保高三千代さんが訪ねてくれた(中)。左は息子の英紀さん。Textile manufacture再生 循環宮本さんは奥田さんに自分の経験も含め、耳の痛いことをズバズバ言います。日本の産地や繊維産業を担う次世代のリーダーとして大きな期待を寄せているのだと思います。 看板を下ろした「みやしん」は、文化学園が買い取り、2013年、21世紀を担う新たな人材を育成する機関でもある「文化・ファッションテキスタイル研究所」として生まれ変わりました。工場はそのまま残され、「みやしん」が築いてきた織物設計資料や、1万点以上の最高峰の技術の生地や製品サンプルが保有されています。宮本さんは所長に就任しました。5代目となる息子の英紀さんは常任研究員。宮本さん同様に理数系に優れた能力を発揮する、職人ともデザイナーとも違う、新しいタイプのテキスタイルクリエーターです。「みやしんの遺産を次の世代に継承したかったので、最終的に一番いいところに落ち着いたかな」。こ ぐんふんとう14TSU NA GU TSUSHIN

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