つなぐ通信 vol.07 2014秋号
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17TSU NA GU TSUSHIN の能力をどれだけ引き出すかが社長のやるべきことだと思ったのです」 100年以上続き、創業商品が今も売れ続けている会社は、めったにありません。しかし〝タワシ一筋〞なので、どうしても仕事の内容が〝ルーティン〞になりがちという問題もあります。そこを新社長は気になっていました。「あたえられたことだけをやるのは、働いていて面白くないでしょう。個々の能力をどうやったら引き出せるかを考えました。『まあ、ちょっと本音聞かせてくれよ』と、社員とコミュニケーションとるのが最初の仕事でしたね(笑)」1世紀以上同じ名前・形・品質創業時と変わらない手づくり守らなければならないものととらわれない新しい発想 北区滝野川の本社社屋は、建築ファンからも愛されている三角屋根の小さな洋館。大正11年頃に建築され、関東大震災にも戦火にも耐えました。1階はショールームを兼ねた店舗です。控えめで温かく、まるで亀の子束子西尾商店を物語るようです。 私たちの取材に対応してくださったのは、5代目の西尾智浩社長と広報の石井淑子さん。地元出身の石井さんは小学生のときに、かつて本社の敷地にあった滝野川工場見学にも来た生粋の〝タワシスト〞。社員の方も地元出身者が多いとのこと。一方、西尾社長は音楽の道を歩み、4年前に40代半ばで入社したばかり。2012年社長就任という驚くような急な抜擢です。「〝社長の仕事はなにか〞を自分なりに考えました。音楽とタワシ作りは業界こそ違いますが、共通の部分もある。リーダーがリーダーシップをとり、大人数をまとめ、ひとつの目標を達成するという点では根本は同じかと。自分が言ったことは安易には引っ込めない。最後の責任はきちんとをとる。そこができていれば、あとはみなさん 亀の子束子西尾商店の社長室には、歴代の社長の写真と一緒に創業者・西尾正左衛門の妻、やすさんの写真が掲げられています。アイディアマン亀の子束子の原料となるヤシの実の繊維は、中身をとった殻を水につけて柔らかくした後、外皮と分離して取り出します。 厳選された繊維を使うため、1個の実からは、1個の亀の子束子しか作れません。創業時は棕櫚タワシだったが、その後生産性の高いパームヤシの実からとるヤシ繊維ヘと移行。概念にとらわれないものづくりをする20~30代の職人を育てたいと語る西尾智浩社長。レトロな洋館の本社エントランス前には元祖亀の子束子の原料の棕櫚の木が象徴的に。

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