つなぐ通信 vol.05 2014春号
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佐原家8代目の滋元さん。佐原家が営業する向島百花園内の「茶亭さはら」では喫茶やお土産物販売、「御成座敷」での料理やお食事などを承っている。百花園には歴史好きも植物好きも訪れ、滋元さんにお話しを伺う方も多い。中/百花園内でお母さんと一緒に。とてもきれいでオシャレなお母さんだったという。右/海水浴に出かけ真っ黒に日に焼けた洋子さん。右側は終戦後すぐに最先端のつけまつげを付けて撮影した写真。孫のまどかさんとそっくりで、まどかさんもビックリ!5月には棚全体にフジの花房が下がり見頃を迎える。孫のまどかさんと。「気に入った写真は“遺影”にと孫から言われるけどたまりっぱなし(笑)」継ぐことになりました。 お父さんの今井榮さんは、百花園のすぐ近くの代々続く「白鬚神社」の宮司。隅田川地域の庶民生活を描いた『墨東歳時記』の著書もあります。昭和初期のモダニズム文学の旗手といわれた龍胆寺雄とは大の親友。ご両親たちは当時「モボ・モガ」と呼ばれたオシャレ人だったといいます。 厳格な家柄とは裏腹に自由人だった榮さんが、著書の「序によせて」に書かれた文面には心打たれます。自分の時代は学校でものを教わると同時に家で厳しくしつけられた。年を取るにつれ、親や祖母から吹き込まれた日常のしつけをありがたい賜物と思うようになった。そういう世の中を作った当時の日本にも感謝しているのだと。 そして戦争中に育った子や戦後の混乱期に生まれた孫に、美しい日本を見せられないこと、自分が親や祖母から与えられた賜物を伝えられないことを危惧しています。下町の生活習慣を綴った『墨東歳時記』は、孫に読ませたいために書き上げたものなのです。 榮さんの想いはつながっていたようです。佐原家8代目となる洋子さんの息当たり前にやってきたこと勉強よりも「世間」を教える06TSU NA GU TSUSHIN しげるしらひげぐうじりゅうたんじゆう子の滋元さんは、墨田や向島界隈の歴史研究にも熱心でNPO向島学会などでも活動しています。また榮さんが重要視していた「正しい箸の持ち方」も代々大切にされ、孫のまどかさんも箸の上げ下げにはうるさいのです。 現在百花園は佐原家の伝統を引き継ぎながら東京都が管理運営し、佐原家が「茶亭さはら」の営業を行っています。滋元さんやまどかさんに任せることが多くなりましたが、洋子さんは百花園の歳時、白鬚神社の行事や祭りではさすが存在感を示します。 現在一人暮らし。「食いしん坊だから、美味しいものを食べたいの」と、食事は自分で作り、お味噌汁も出しはかつおぶしを削ります。身だしなみはきちんとし3日に1回は美容院へ。「若い世代につないで欲しいもの?そんな偉そうなものないわよ」と一笑。自分たちがつないできたものを見れば分かるということなのでしょうか。すべては当たり前にやってきたことだから。■茶亭さはら☎03-3619-4997http://www2u.biglobe.ne.jp/bokutei/index.htmPRESENTかつて百花園には「東窯度(あずまかまど)」という窯があり土産物などの焼き物が作られていました。そのレプリカの「都鳥箸置き」を3名様にプレゼント!応募方法は37ページをご覧ください。

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