つなぐ通信 vol.04 2013冬号
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08TSU NA GU TSUSHIN 命のタネを日本中にばらまき多様性の花を咲かせたい 最後に野口さんが最も懸念している「雄性不稔」のことをお話します。これは植物の葯や雄しべが退化して花粉が出ず子孫を作る能力のない状態のことで、人間でいうと無精子症。この突然変異の奇形の花を利用してつくる「F1種」が現在の主流になっているといいます。 従来の品種改良は「除雄」というやり方で、自家受粉させないように、雄しべを引っこ抜き、別の雄しべの花粉をつけて雑種を作ります。「雄性不稔」は引っこ抜く手間が省けるのでこれをどんどん増やします。ハウスに「雄性不稔」の植物と受粉させたい別の植物を入れて、開花したらミツバチを放ち受粉を手伝わせます。驚くのは、その時に高濃度二酸化炭素を入れると植物の生理が狂い、本来ゲノムが違い自然界では絶対混じらない野菜同士の受粉が可能になるというのです。 野口さんは子孫の作れない植物の蜜を集めているミツバチ、自然界では存在しない野菜を食べている人間に果たして影響がないのか危惧します。「あきました。編集者時代手掛けた雑誌『COM』の『火の鳥』の初版本、小学生の時に強烈な刺激を受けた『白骨船長』や『来るべき人類』もあります。神や正義や平和の名の元に核兵器のボタンを押すというパラドックス…は、食糧危機を救おうという名のもとに、世界征服を目論むタネの巨大メジャーともダブります。 野口さんは大きな目をキラキラさせながら気さくで隠すことなく自分をさらけ出します。愛煙家で常に手からタバコを離さず、お酒も大好き。「子供の頃、野菜ばかり食わされたから、実は野菜はあまり好きじゃない(笑)」食べ物に神経質でもなく、環境活動家のイメージもありません。 「手塚先生の志を引き継ぎ、『火の鳥』の看板に恥じないタネ屋であり続けたい。先生の願いに一歩でも近づきたい」という思いが大きい。固定種のタネ屋を島田さんの畑で採れた固定種の野菜の数々。「小野地さんの方が立派な野菜を作りますよ(笑)」と恐縮。「固定種の野菜を食べるときは、薄味にすることです。凝った味付けがむなしく感じます。鮮度、無肥料、自家採種。これがすべてです」PRESENTネット販売開始と同時にあっという間に売り切れるという大人気の「アロイトマト」と、農林大臣賞を何度も受賞している野口さん自慢の「みやま小かぶ」のタネを5名様にプレゼント!ぜひ自家採種して増やしていってください!応募方法は37ページをご覧ください。くまでも僕の仮説ですが…人間の精子が減少していることやミツバチがいなくなったことは、あながち無関係でないような気がします」 今でも手塚漫画から得たことが思考回路の根源にあるといいます。「生命の尊厳と地球の持続」のためには「固定種」を復活させるしかない。「そのためにいろいろな固定種のタネを日本中にばらまきたい。タネの持つ多様性の花を咲かせ、地域地域にあった『伝統野菜』に変化させたいのです。固定種の野菜を栽培して、どうか自分でタネを採ってください」と熱く語り全国を行脚します。営みながら「命をつなぐ固定種」の大切さを講演や執筆で訴え続けているのです。タネは一粒万倍(いちりゅうまんばい)といって、翌年には1万粒になる。1万粒を播けば1億粒…と宇宙規模になる。ゆうせいふねんやくじょゆうネット販売開始と同時にあっという間に売り切れるという

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