つなぐ通信 vol.04 2013冬号
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20TSU NA GU TSUSHIN 一度ハマると逃れられないジャズボーカルの奥深さ 長いことジャズボーカルスクールで教えていて、20代から始めて60代になったたりして。「みっちゃん、歌上手ね」って随分言われました。そんな歌好きの少女が中国から命からがら引き揚げて、音楽学校に通いながら米軍キャンプで歌い始め…。実際に苦労しましたね。今頃、よく生きているなあと思いますよ。ほんと、負けじ魂だけで生きてきましたから。決して強くはないんですよ、私。心配性で、心を痛めたひよこちゃんみたいになることも(笑)。でもステージに立つと強くなれる。喋るのは得意じゃないけど、歌うのは大丈夫。阿佐ヶ谷ジャズストリート2013のコンサートにて、瑞々しい歌声を披露。2006年に受賞した旭日小綬章。生まれ変わったら、普通の奥さんになって楽したい(笑) とにかくジャズをやるしかない人生でした。離婚して、娘が2人いましたでしょ。食べさせて着させて学校行かせなければならない。必死でした。幸せな娘二人が同じ道を歩むとは思いもしなかった 今は娘二人(大橋美加、豊田チカ)もジャズシンガーとして活動していま自宅のリビングルームにはピアノがあり、「スターダスト」の譜面が。ライブ前にはここで声を起こすとか。ことに、仕事は全然切れたことがないの。ばかみたいに歌い続けて60年。だから、ジャズは私にとって習慣というか、ごく自然なこと。今はジャズを歌うことが自分にとって一番自然で無理がなかったんだなと納得していますね。 もし生まれ変わったら?ジャズシンガーにはなりません。普通の奥さんになって楽したい(笑)。でも最近の普通の奥さんって楽できないと聞くし、やっぱり働くことになるのかしら?私、働き虫なんだな…。生徒とか、何十年もいる生徒が何十人もいるんです。一緒に養老院に行こうかと(笑)。そのぐらい、ジャズボーカルの魅力って尽きないです。名曲はコードの流れが素晴らしく、ひとつの音しかとれないのではなく、この音もこの音も、この音も合うなって見つけていくと、どんどん遊べる。作曲しているような錯覚に捕われることもあります。昔の人が作った曲が無限にありますから、いくらでも追求できて、離れられなくなっちゃう。それが魅力であり、怖いところです。 同じ曲でも長く歌っていくうちに変わってきますしね。音域が狭くなってくると、この音が出ないから別の音にしようと工夫したり。それがいい味になることもあるわけです。人生体験から、曲の捉え方が変わることもあるかもしれないけど、私はそういうことで泣いて歌ったりするのは軽蔑します。心で泣いても顔は知らんぷり。それが歌に深みを生むものです。

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