つなぐ通信 vol.03 2013秋号
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34TSU NA GU TSUSHIN  世の中の多くの人たちが「あなたの宗教は何ですか」と尋ねられると「無宗教」と答えることで有名な我が国。その一方で「私はXX教徒です」と自己申告する人の語る信徒数を合算すると我が国の総人口より多くなってしまうという笑い話もある。しかしそんな我が国でも不思議とほとんどその実態が知られていない宗教がある。「ゾロアスター教」と「マニ教」だ。 ゾロアスター教は別名「拝火教」と言われる。これは紀元前12世紀〜紀元前9世紀頃、中央アジアないしイラン高原東部から「ザラスシュトラ・スピターマ」という神官が現れたところから始まった。彼は民族移動の真っ最中であった古代アーリア人の一人であり、ハエーチャスパ族の神官一家の息子であった。今の言葉で言えば、古代アーリア人社会における「スーパー・エリート」の一人だったのである。 ところがこのザラスシュトラ・スピターマは二十歳になった時、何を思ったのか自らをはぐくんできたはずの古代アーリア人の宗教に反旗を翻したのだ。しかもそれだけではない。家出までして放浪の旅に出たというのだから尋常ではない。当然、人々は彼をもはや仲間とは認めず、彼の教えはその従兄しか信じないという不遇の時代が続いたのだという。 しかし世の中とは実によく出来たものである。ザラスシュトラが42歳の時、ナオタラ族の王カウィ・ウィーシュタースパと出会ってから運が開けたのだ。王は彼の語る神託にすっかりのめり込み、それまで宮廷を牛耳っていた古代アーリア宗教の神官たちを一斉に排除したのである。その一方でザラスシュトラは王の右腕である宰相フラシャオシュトラの娘を後妻に娶った。こ享楽か、規律か〜最後に人間を突き動かすものとは〜宗教史上に巨大な足跡を残すゾロアスター教とはイラスト=クニ・トシロウ

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