つなぐ通信 vol.03 2013秋号
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29TSU NA GU TSUSHIN 認知症でも、きれいなものに対する感性は変わらない霊安室を一番いい場所に配置し晴れやかに送り出す写真=貝塚 純一 文=三浦 真紀施設長の野口万喜子さん。サラリーマン家庭から開業医に嫁ぎ、ホームのオープンとともに資格を取り、施設長に。「人と接する職業は向いているのかなと思います」。茶道が特技で、1月の初釜と4月のお花見茶会ではお着物姿でお茶をたてるとか。タイル貼りの建物に、アールヌーヴォー調の廂。さまざまな建築様式がミックスした、アート感覚の建物。理事長が色に敏感で、外側のタイルも窯で焼かれたものを自ら選んだという。おとぎ話に出てきそうな洋館の入り口。日々大勢の方が出入りされています。一枚一枚異なる廊下のステンドグラス。防炎の垂れ壁を3mおきにつけなさいという指導から、ただの垂れ壁ではつまらないと、アーティストが作ってくれた。ちなみにこのホームは館内に鍵や仕切り扉が一切なく、誰もが自由に動ける。 このようにアートに溢れた空間で暮らすことで、何か変わるものがあるのでしょうか。 「入所なさる時、利用者の方は玄関のシャンデリアを見上げて、『ここはきれいなところだね』と。認知症の方はどんなに進行しても、きれいなものはきれいとおっしゃるんですね。廊下のステンドグラスの絵を自分の部屋の目印にしたり、ストレッチャーで運ばれる時も天井の絵が目に入ったり。自然とアートに触れて楽しん このホームの象徴的な空間が中央にある「無量寿」。仏教用語の 命よりも尊いものはない という意味から名付けられました。吹き抜けの高い塔にあり、土壁と手のオブジェが印象的。 「霊安室を一番いい場所に置き、裏口ではなく正面から皆で送り出したいというのが私たちの気持ち。その気持ちが「無量寿」に表れています。私たちは宗教は問いませんが、キリスト教の方がみたらイエス様やマリア様の手に、仏教の方が見たら仏様の手に見えるようですね。亡くなった後はこちらが正面玄関となり、利用者様、スタッフ全員で送り出します。10人程度しか入れませんが、ご希望があればここで通夜、告別式も行います」(野口さん)普段からオープンになっている「無量寿」は、ステンドグラスから美しい日が差し込み、何とも爽やかな空間。 「寿命一杯に頑張った方たちですから、忌み嫌ったり隠したりせず、晴れやかに送り出したい」とおっしゃる上野さんの言葉が胸に響きます。たとか。桂離宮の修復工事をなさった方、日展に15回入選された方、国展に入選された木工の方など、アーティストの方々はその後大きく活躍なさっています。修復している箇所はありますが、20年経っても建物は全然変わっていません」と施設長の野口万喜子さん。でいらっしゃるようにお見受けします。もちろん長く住めば馴れてしまうことですが」と副施設長の上野なみ子さん。むりょうじゅ

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