つなぐ通信 vol.03 2013秋号
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22TSU NA GU TSUSHIN 「ものづくりの楽しさをもっと知ってもらいたい」と始めたワークショップ。定員3人が集まると行ってくれます。最上級の革で手縫いのパスケース、名刺入れなどを作ります(要事前予約)。 鞄業界に入ったのは20歳、独立したのは25歳のときでした。15年くらいは問屋の下請けが中心で、価格競争かるというのです。「お客さんに納得してもらわないと気が済まないんです。革も『ミネルバボックス』『ブッテーロ』14色、『プエブロ』9色の中から選ぶことができます。細かい対応も手間ひまかけることも個人でやっているからできるのだと思います。どうしたらお客さんに喜んでもらえるかなど色々考えていると楽しくなってくるんですよ。時間はかかりますけど(笑)」革マニアによく知られる革ブランドが揃い、しかもたくさんの色から選べるというのですから、革への思いは並々ならぬものがあります。 中野さんは「高額品だから富裕層」とするマーケティングに疑問を呈します。あるイベントで知り合った若いご夫婦はしばらくしてからセミオーダーの鞄をオーダーしてくれました。2年間一生懸命お金を貯めていたのだといいます。そういう方は初めてでした。「オレ泣きそうになってしまいましたよ。この感覚は自分で作ってないとわからない思う。『価値が分かる層』のもの作りがしたいんです」2階は鞄ショップ。セミオーダーの鞄や革見本、オリジナルブランド『Slow Motion』が置かれている。革のエイジングの美しさを出すために仲間に新品のバッグを使用してもらった。『COTONAS』という墨田区のつくり手仲間の商品も並ぶ。2階のショップでは、貸し切りでイベントをやることもあります。もの作りイベントでたくさんの仲間が増えました。お互い宣伝し合い、支え合い、楽しい会をやって輪を広げています。兄貴分の中野さんは浴衣がよく似合います。『すみだ川ものコト市』10月26日(土)墨田区の牛島神社で開催! http://sumida-monokoto.info/  仲間が道を開いてくれた小さくても世界を相手にできるもの作りイベントでたくさんの仲間が増えました。お互楽しい会をやって輪を広げています。兄貴分の中野さんらの賃金削減、材料の質の低下など、無機質な大量生産の実態を見てずっとストレスを感じていたといいます。少しずつ自分のモノ作りが芽生え、試しては失敗の日々が続き、ようやく自信が持てるようになりました。 しかしそれ以上どうしていいのか分からない…悩んでいる時に墨田区の『ものコト市』イベントや東向島珈琲店で、共感できる人たちと知り合ったのです。お互い行き来したり、フェイスブックなどで宣伝し合うことで、他地区からもお客さんが来てくれるようになりました。 鞄作りで余った革を利用してワークショップも始めました。参加者にとても喜んでもらえ、輪が広がります。仲間たちとの出会いが人生を変えたのです。「今までのもの作りの思考回路が間違っていました。大量生産のシステマチックな中ではいいものは作れない。心から楽しんだり、遊ぶことが大事なんだと。自分で作ったものを直接手に取ってもらいたいのです。これからは規模が小さくても世界を相手にできると思います」と、熱く語ってくれました。

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