つなぐ通信 vol.06 2014夏号
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07TSU NA GU TSUSHIN 写真=貝塚純一 文=成田典子  橋本さんは自分の技術を職人さんや学生たちに惜しみなく教えます。「大量生産時代のもの作りの底上げをしたい」という大きな目標があるからです。企業が利益を追求しすぎると職人の手を壊し、いいもの作りを潰してしまうのです。もっと職人の仕事場を増やしたい。目指すのは「波状のような精鋭職人集団」。一代目の自分が基礎の土台を築き、違う形になってもずっとつながっていくもの作りです。 師匠の関さんからは、技術以上に「生き方」を教わったといいます。「職人はアウトローが多いが、これからは柔軟に生き抜く頭が必要だ。職人も表に出なければならない」。橋本さんは、この夏初めて自分のブランドを出すことにしました。革や製法を熟知している「作り手側が提案」する、履きやすく、質がよく、リーズナブル価格の手製靴…一般の方が息子や孫にも履かせたいと引き継がれていく靴です。「マスマーケットを底上げしないと、てっぺんは見えてこない」。今はその種蒔きです。目指すは波状する精鋭職人集団職人が表に出ていく靴作りを橋本さんは革の裁断も膝に乗せてすべてこの席で行う。師匠の関さんの靴には色気があり、スピードがあり、人生観があるという。技術的には「手が枯れる」こと…そういう職人を目指している。右/この夏初のオリジナル手製靴ブランドを立ち上げる予定。基本型の長く大切に履き続けられる靴。橋本さんの最高の褒め言葉は「色気のある靴」。色気とは「オーラ」だという。左/愛煙家の職人は多い。叔父のオーダー靴店で見た関義信さんが制作したチャッカブーツに惚れ込んだのが手製靴職人を目指すきっかけ。工房名の「J・S・T・F」はJapan Shoes Technical Factoryの頭文字。橋本さんを頭に「チーム・ハシモト」が結成。精鋭職人集団を目指す。手製靴は「ハンドソーンウェルテッド」という製法で作られる。何度も底替えができ、長く履き込むほどに足に馴染んでくる。写真は修理中の靴。靴の上部を作る製甲(せいこう)職人の樋之本東暁(ひのもととあき)さん。革の型入れから裁断、縫製仕上げはもとより企画もする実力者。にも職人にも価格メリットを生み出すには「スピード」は不可欠で、これが「職人のプライド」なのです。

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