つなぐ通信 vol.06 2014夏号
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34TSU NA GU TSUSHIN  歴史書を紐解くと時に怪物のような人物に出くわすことがある。そうした人物は「教科書」という意味での歴史書にはその名が全く載っていない。載っているとしてもほんのわずかの記述だけであり、その怪物ぶりの全貌を示しているわけでは全くない。 そんな「怪物」の一人が頭山満である。戦前、筑前玄洋社のシンボルとして知られた人物だ。戦後の我が国における教科書では「国家主義者、政界の黒幕、大アジア主義を唱え大陸進出に暗躍した右翼の巨頭」と描かれることが多い。これだけを読むと何ともいえず忌むべき人物のように思えてしまう。 だが、こんな話を知ったらばどうだろうか。―――英領インドで革命運動に明け暮れていた闘士ラース・ビハーリー・ボースが1914年に我が国に亡命してきた。当時の我が国はアジアの各国で帝国主義列強からの独立を求める闘士たちにとって、唯一の心の拠り所であり、「先生」であった。やれ「過去の清算」だ、「従軍慰安婦問題」だと喧しい今となっては信じられないことだが、これは歴史の事実である。 その頃、我が国は「大英帝国」と同盟関係に立っていた。一方、その植民地統治下にあるインドから革命の闘士が亡命してきたのだ。英国は外交ルートを通じて直ちに日本側に抗議。我が国はついに根負けし、亡命から4か月してボースは国外退去処分を受ける羽目になってしまう。 しかしここで立ち上がったのが怪物・頭山満だったのだ。義侠心あふれる頭山満は「ボースの国外退去などまかりならん」といきり立ち、事実、新宿・中村屋へとボースを隠密裏に移してしまう。対する政府の側は大隈重信が首班だったが、これまで元老たちの鼻をへし折ってきたこの怪物が相世を糺す天下の素浪人頭山満という憧憬右翼の巨頭・頭山満が救ったインドの革命家ボースの亡命イラスト=クニ・トシロウただとうやまみつるやかま

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