つなぐ通信 vol.06 2014夏号
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29TSU NA GU TSUSHIN  四季折々の自然が楽しめる、緑豊かな住宅地の一画に、緑の郷はありました。創立から25年。利用者の立場に立った老人ホームとして、先駆け的な存在といえるでしょう。「かつて老人ホームといえば、ご利用者の方がお世話になりますと頭を下げる雰囲気で、私は常々違和感を持っていました。ですから緑の郷を立ち上げる際、新しい施設を作るのであれば、ご入居者が一番大切にされる施設作り、そして働く職員が誇りを持てる施設にしたいと申し上げました」と施設長の古川幸子さん。 すぐ隣に横浜総合病院があり、院長自らが担当医として入居者をケア。ここは終の住処だから看取りをするのはあたり前と、20数年前からターミナルケアにも取り組んでいます。 老人福祉に携わって40年になる古川さんですが、仕事をやめたいと思ったことは一度もないとか。「むしろこの仕事に出会えてよかったと思うことがたくさんありました。ある大学の先生が、『高齢者は知識と経験をたくさん持っていらっしゃる。つまり高齢者施設は宝の山だ』とおっしゃった通り、ご入居者と関わることで私も成長させて「お年寄りに不必要な治療はかえって尊厳を損なうという考えのもと、胃瘻、経管、点滴は行わず、人の営みの自然な成り行きで対応するようにしています。自然に枯れていくと、穏やかに、とてもいいお顔で逝かれるんですよ。来たばかりの看ご入居者が一番大切にされる施設作りを最期は経管、点滴をほぼ行わず、自然の営みに任せる高齢者施設は宝の山。知識と経験がたくさんある入居者の平均は86歳。「スタッフが面白いでしょ。だから私、笑ってばかりいるの。食べるのが好きだし、生きているのが嬉しい」と大正生まれ99歳の武田智恵さん。インドネシアから来日して6年。ティアス・パルピさんは今では資格も取り、流暢な日本語で入居者とお喋り。その一生懸命な姿にエネルギーをもらえる。もうすぐ産休でお休みに入る予定。可愛くて溌剌としたスタッフが多いですね、と古川施設長に話すと、「嬉しい!!(笑)。資格より人間性重視で採用しています」とのこと。護師さんが、亡くなった方のお顔はこんなにきれいなのかと驚かれたほど。今は99%の方がここで亡くなります」 基本は4人部屋ですが、重篤になった場合は、ご家族が24時間いつでも来て過ごせるように、個室に移ることも。「犬が大好きだったご入居者が最期の時間、その部屋で犬と過ごされたこともありました。小さなひ孫さんがお部屋を走り回る中、永眠された方もいらっしゃいます。それが自然に実現できるのは病院が隣にあるから、そして職員の意識が高いからだと思います」 亡くなられた時はお見送り式といって、表から見送るのが緑の郷流。「玄関にお棺を置き、全入居者と職員全員がピンクや黄色や季節のきれいな花をたむけ、送り出すんですよ」

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