つなぐ通信 vol.06 2014夏号
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21TSU NA GU TSUSHIN ジョーは憧れの人物像自分はグスグスしている段平タイプ漫画家は恥ずかしい仕事漫画は悪書だと燃やされた写真=貝塚純一 文=三浦真紀  スポーツは自分がするのも見るのも、もちろん描くのも大好きです。人間が頑張っている姿、あるいは挫折、それからライバルがいたりすると、絵として表現しやすい。あと漫画家は1日中背中丸めて、机に座ってるのが仕事でしょ?時間に追われて冷や汗をかくん 気の合う漫画家はいっぱいいます。藤子不二雄Aさん、さいとう・たかをさん、古谷三敏さん、松本零士さん、高井研一郎さん…。皆、長老と言われるようになっちゃった。それぞれ雑誌で知ったんです。ああ、上手い人が出てきたなってハラずっと〝漫画の種〞を蒔いてきた。雑草のごとく育ち、文化になったかな。仕事場にて。雑誌や本、カセットテープやビデオテープなど、たくさんの資料に囲まれている。1984年の創刊時から描いている、ゴルフ漫画雑誌『GOLFコミック』の表紙イラストにペン入れ中。ですよ。そこで登場人物にスポーツをやらせると熱い汗が描ける。汗を描くだけで自分でも気持ちがいいんですよ。 これまで漫画の登場人物には自分自身や過去、家族、友達を重ねて描いてきました。過去を振り返って、もうちょっとこういう生き方をしたほうが格好良かったんじゃないか、とかね。こういう人間になりたかったと思いながら、ヒーローを描く。こういう人間は嫌いという人がライバルになったり。 『あしたのジョー』の主人公・矢吹丈は自分の対極にいる人間です。貧しい少年時代は似ていますが、生き様は対極。自分はこういう人間にはなれないなあ、だけどなれたら寂しいだろうけど充実した生き方ができるだろうと思いながら描きました。ジョーの師匠になる段平は私に近いかもしれない。昼間から酒飲んで、グズグズ夢ばかり追いかけているダメタイプ(笑)。 駆け出しの時は少女漫画を描いたんですよ。ちょうど漫画家になった頃、女性の雑誌にも漫画がほしいという風潮に。でも当時、漫画家は男の仕事で、少女漫画を描く人はあまりいませんでした。女の子を描くのが苦手だから無理と思ったけど、「描けません」なんて言ったら、そこで終わっちゃう。だから古本をかき集めて、見よう見まねで必死に描いたんです。私と同世代の石ノ森章太郎さんや赤塚不二夫さん、松本零士さんも皆、少女漫画から始めたんですよ。『少女俱楽部』『少女ブック』『少女』などの雑誌に拾われて、漫画家になっていったんです。

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