つなぐ通信 vol.06 2014夏号
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15TSU NA GU TSUSHIN 写真=貝塚 純一 文=成田 典子 多摩川と丘陵と町家が並ぶ青梅宿の豊かな地域遺産青梅商人の矜持〝知的道楽〞 『青梅宿アートフェスティバル』文学好きジャズ好きの横川秀利さん。空き家対策として外科医院跡は『青梅赤塚不二夫会館』に。院長室が館長室となり、壁にはイベントの写真がびっしり。家業の雑貨屋跡地は昭和の心象風景をテーマにした『昭和幻灯館』に。遊び心と物語性のある街おこしが魅力。上/代議士だった津雲國利氏の「津雲邸」。市民遺産計画が進む昭和初期の名建築。下/青梅縞の問屋だった豪商「稲葉邸」。火災に強い土蔵造りが特徴。「油屋」の恩田敏造さん夫妻。横川さんより4歳上の良きパートナー。 青梅には『昭和レトロ商品博物館』『青梅赤塚不二夫会館』『昭和幻灯館』の小さな博物館があります。3つの館長を務めるのが、青梅で雑貨商を営む家に生まれ今年79歳になる横川秀利さん。「昭和レトロ」という名称の生みの親であり、青梅商店街の活性化に尽力されてきた方でもあります。 江戸時代の青梅は「青梅縞」が一世を風靡し、綿織物や林業などの産業が盛んでした。これらを江戸に運ぶ多摩川の水運や青梅街道が整備され、「青梅宿」として発展していきました。昭和に入り戦火を逃れた青梅は、いち早く織物業が復活。「青梅夜具地」と呼ばれた布団地の生産量は、全国の90%を占めたともいわれます。「ガチャン」とOumeOume織機を動かすと「万」というお金が生まれた「ガチャ万」景気を迎えたのです。 昭和30年〜40年代、青梅駅周辺は西多摩地域最大の繁華街となり、青梅に行かないとお正月用品が買えない時代だったといいます。しかし郊外に大型商業施設の開発が進むにつれ、青梅駅周辺の商店街に空き家が増え空洞化が進んでいきました。「シャッター通り」の危機です。 このような状況の中、商店街の振興策が計られ、「青梅商店街活性化事業」のひとつとして横川さんを中心に始めたのが『青梅宿アートフェスティバル』でした。平成3年(1991)を皮切りに毎年11月に開催。今年で24回を迎えます。1月の「だるま市」、2月の「青梅マラソン」、山車が行き交う5月の「青梅大祭」、8月の「青梅市納涼花火大会」と並ぶ、青梅を彩る風物詩となりました。 横川さんは、昭和のドラマ黄金期を築いた演出家・プロデューサーであり、小説家でもある久世光彦が大好きでした。久世文学のような妖しい美学を表現したのが『青梅宿アートフェスティバル』なのです。 旧い町家が並ぶ青梅は江戸川乱歩、妖怪、猫、花嫁御寮など、大正から昭和にかけての叙情的な文化が連綿と流れているといいます。まさに舞台としてはうってつけ。手術台のある空き病院を利用した「江戸川乱歩展」、「荒木経惟写真展」では町家一軒まるごと〝縛り〞を入れてド胆を抜きました。「根が遊ぶのが好きなんですがね、本来商人は遊ばなくてはならないんですよ。それが日本の文化を形成してきたわけでしょう。せめて〝知的道楽〞を発揮しようと…まあ商人としての矜持なのかもしれません(笑)」 アートフェスティバルの成功を機に本格的な街おこしが始まりました。おうめじまやぐじのぶよしくひこてるぜきょうじ※3館めぐり共通券 大人800円 小人450円 ※10名以上団体割引有り●青梅赤塚不二夫会館東京都青梅市住江町66☎0428-20-035510:00~17:00 月曜休館入館料:大人450円 小人250円http://akatsuka-hall.omjk.jp/●昭和レトロ商品博物館東京都青梅市住江町65☎0428-20-023410:00~17:00 月曜休館入館料:大人350円 小人200円http://showa-retro.omjk.jp/●昭和幻灯館東京都青梅市住江町9☎0428-20-035510:00~16:00 月曜休館入館料:大人250円 小人150円http://gentou-kan.omjk.jp/江戸、明治、大正が連綿と流れる、青梅の昭和文化

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