つなぐ通信 vol.06 2014夏号
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12TSU NA GU TSUSHIN 「発酵の里こうざき 酒蔵まつり」で寺田本家の敷地内では「お蔵フェスタ」を開催。5万人が訪れるという大人気イベント。つ心地良い環境づくりのために、敷地内には炭をあちこちに埋めているのですが、最も大切なのは〝作り手の気持ち〞ではないかと思うんです」 優さんの提案で「酛摺り唄」を復活させたのもそのためでした。昔の酒造りのように、唄いながら酒造りをする方が楽しい。作業時間も計れるし、何よりも微生物が喜び、いい発酵を高めてくれると思ったからです。作業工程により「米洗い唄」「櫂つき唄」「仕込み唄」などの酒造り唄が次々に唄われるようになりました。「唄には祈りみたいなものがあって、ある種のスピリチュアルですね(笑)」 とても悲しいことですが自然酒造りに尽力した啓佐さんは、2年前に急逝しました。しかし優さんを24代目の当主に、杜氏も蔵人も若い人たちが頑張っています。優さんは「経験よりも熱意」が大事だといいます。 寺田本家の「古くて新しい酒造り」は、「常識的な酒造り」をしてきたベテラン杜氏にとってはある意味で邪道。米を削るほど雑味のないいい酒とされる大吟醸の淡麗辛口とは真逆。寺田本家ではできるだけ米を削らず米の生命力を残した、無濾過の酒が「いい酒」なのです。自然力のある無農薬米から造る酒は、「雑味」というより「旨味」と思える味なのだといいます。 寺田本家がとても大切にしているのが「地域と循環する酒造り」です。古くから神崎町は、酒、醤油、味噌、漬け物などの醸造業が盛んでした。これは米作りを基幹産業とする中で、農家の生活の知恵として「発酵文化」が発達してきたものです。「平成の大合併の波が押し寄せた時に、小さくても単独でやっていこう。小さいからつながりを大切にしようと提案したんです」 優さんの呼びかけで少しずつ仲間が集まり「発酵の里」として町おこしが始まりました。寺田本家と鍋店の2つの酒蔵元が中心となり毎年開催する「発酵の里こうざき 酒蔵まつり」は、地域内外から約200店が参加。6千300人の小さな町が5万人で溢れかえる一大イベントとなっています。「僕が目指すのはみんなが楽しく仕事ができる場を作ること。そして〝地域が発酵していく〞もの作りです」  自然酒造りは「地域の循環の力」で成り立っています。楽しい気持ちが共鳴し、人も微生物もつながり、一緒に発酵しているのです。古くて新しい酒造り地域と循環し発酵する暮らし●株式会社 寺田本家 千葉県香取郡神崎町神崎本宿1964☎0478-72-2221http://www.teradahonke.co.jp/※写真提供:寺田本家 寺田本家さんの「五人娘 純米吟醸酒」720ml を2名様にプレゼント!      生酛(きもと)仕込みらしさがでた、芳醇で旨みのある吟醸です。応募方法は37ページをご覧ください。右/蔵によっては“心臓部”といわれる「製麹室」。麹(こうじ)の出来具合で酒の味が変わる。湿度温度が調整され、部屋中に5トンの炭が埋められている。 左/米の乳酸発酵飲料「マイグルト」。右/原酒の「もろみ造り」が行われているタンク。30日以上かけて発酵させる。看板酒の「五人娘」は娘ばかりの家系であったことから命名。22代~24代まですべて婿。24代目も娘2人の父。上/23代目の次女で、24代目の妻の聡美さん。麹や酒粕の料理が評判を呼び、レシピ本の出版や料理教室も。左/酒粕粉チーズをかけたサラダ。酒粕・豆乳・バナナなどをMIXしたスムージー。発酵で賑わう寺田本家の「お蔵フェスタ」かいもと すとう じなべだなhttps://www.facebook.com/teradahonkePRESENT

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