つなぐ通信 vol.04 2013冬号
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29TSU NA GU TSUSHIN 日本で初めて!美術館併設の特養ホームイギリスの荘園領主のように入所者をおもてなし上/このホームのオリジナル絵葉書セット。この絵葉書を引っ越し報告に使う入所者が多いという。下/英国ケンブリッジに長く住んでいた志村博氏のシルクスクリーンが展示されている。館内は全体にスペースが広々ゆったり。車椅子も動きやすい。美術館スペースでは、作品の前で入所者が将棋を楽しんでいた。穏やかな日常の風景。美術館には入所者も散歩がてら、気軽に訪れる。絵を眺めながらソファでお喋りしたり、何とも豊かな時間。 相模原の閑静な住宅街にあるマナーハウス横山台は、日本初の美術館が併設された特養ホームです。1階から5階までのセミパブリックスペースには、志村博氏のシルクスクリーンを82点展示。雄大な風景が描かれた作品は、観ているだけで心が癒されるもの。この作品を観るためだけに訪れる人も多いとか。「老人ホームというと、今までは関係ない人はまったく縁のない場所でしたが、美術館を併設することで地域の方や今まで老人ホームに触れたことのない方にも来ていただけます。館内には地域交流スペースもあり、誰もが利用できる地域の拠点として作られました」と施設長の野田達夫さん。 地域交流スペースは高齢者のサロンやお教室に。また本がたくさんあるので、近くの小学校の子供達が読みに訪れたりと、開かれた場となっています。「一昔前は老人ホームというと隔離されたイメージがあり、入った方も家族も内緒にしたいということもありました。当法人の湖山泰成理事長は『私、こういうところに引っ越したのよ』と自慢できるような、素敵なホームを作ることが長年の夢でした。開かれた老人ホームということで、いろんな人々との交流も楽しめ、社会とも接点が持てる。素敵な絵を飾っているホームはたくさんありますが、美術館としてひとりの作家の作品をこれほど展示してあるところは他にありません」 このホームを運営する湖山医療福祉グループはこの30年、札幌から島根まで、16都道府県にわたり25法人で福祉事業を展開。長年の蓄積を元に、より理想のホームを追い求め、今年4月にオープンしたのがこのホームというわけです。 思いは マナーハウス という名前にも込められています。 マナーハウス(Manor House) とは中世イギリスの荘園の領主の邸宅のこと。住む方たちに荘園の領主のようなおもてなしをしたい。その考えは、ホームの至る所に行き届いています。 1階の入り口を入ると、ホールの向こう側にはガラス張りの広々としたオープンキッチンが。厨房で働く人々の制服は、まるでおしゃれなカフェの店員さんのよう。ホールにはカフェコーナーがあり、入所者の方だけでなく、美術館や地域交流スペースを訪れる人も利用することができます。

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