つなぐ通信 vol.04 2013冬号
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18TSU NA GU TSUSHIN  「多摩織」など伝統的な手織りは代々引き継がれていますが、自動織機で量産されるものは、社会の需要により変遷しました。父の榮一郎さんの時代は紬ブームで、多いときで月800反の着物地を織り上げていたといいます。現在はストールやマフラーが主流。八王子特産のシルクではなく、綿や麻やカシミヤなどに変化しています。 20年ほど前からはデザイナーズブランドを手掛けています。「はっきりいうと手がかかるものがうちに来る(笑)」。布を織るだけでなく、フリンジの結び方を工夫したり、フェルトの玉を付ける加工、ニードルパンチを加えたり、ユニークな 耳 の処理など、他ではなかなかできない独創性のある後加工表現が気に入られたのです。 伸さんはトレンドもキャッチしながら住まいの中庭をはさんで蔵や工場があり、奥には畑もある。柴犬のレックスは、他人にはあまりなつかないが澤井伸さんにはよく甘える。休憩で寛ぐスタッフ。女性スタッフが多く、美術大学出身の方が目立つ。工場の見学や織り体験を行ったり、大学の先生とのパイプなどによるものらしい。学生さんは自分の進路を意識して気軽に見学に来る。学生時代工場でアルバイトをしたことがきっかけで社員になった方も。独創的な後加工の魅力がうちのオリジナリティかな1染色された糸を枠に掛けてボビンに巻き取る作業 2ジャカード織りは柄を打ち込んだパンチカードを利用 3染めた糸や織り上げて糊抜き洗いをした生地が中庭で天日干しされる 4今年武蔵野美術大学を卒業した唯一の男性社員の内村航さんリーダー格の曽我瑛子さんは、2人のお子さんのお母さん。新作を試織します。新しい糸や新型加工機械を試したり、織り組織を変えてみた時に、突発的に面白いものができることが多いといいます。「凝ったものは希少価値があるけど、それが量産につながり、月どのくらいの量が織れて利益が出るのかを考えないとね。コンテストで賞をもらってもそれで終ってしまうこともあるし…実力と経済がともなわないとね(笑)」。クリエーターとしてばかりではなく、経営者の顔も覗かせます。「 作品 のようなものをアパレルのデザイナーさんに見せて、気に入られたらいかに量産できるかを考える。それがうちの オリジナル になるかな」と淡々と語ってくれました。

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