つなぐ通信 vol.02 2013夏号
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08TSU NA GU TSUSHIN 実家にあった「鉄道唱歌」を奏でるオルゴール時計は明治時代のもの。今でもちゃんと動きます。お父様との思い出のオルゴール時計をお貸りして撮影しました。他にも昭和の懐かしいモチーフなどが描かれています。 この絵手紙を書いたのは、八王子在住のKさん(会社員・58歳)2009年から約3年間、闘病生活を送っていた福岡県のお父様宛に出されたものです。丁度この頃Kさんは山形県に単身赴任をされており、離れていてもお父様のためにできることはないかと考えていました。折しもテレビで認知症の方に毎日絵手紙を書いている女性を見て、これだったら自分もできるかもしれないと思い、始めたといいます。 父と息子は、なかなかコミュニケーションをとるのが難しいといわれますが、Kさんは絵が好きだったことや「単身赴任」という環境が「何か思い出を綴る息子の絵手紙が父の記憶を呼び起こす父のため、母のため自分のために出し続けた平成の父息子新しいことを始めてみよう」いう気持ちにさせたようです。 山形花笠まつりのこと、日々感じる山形の自然…近くの川に鮎がいること。甘露煮が手に入ったら送りますね。お父さんと魚とりに行った時カンテラを持っていきましたねと、カンテラの絵を添える。天童のオルゴール博物館を訪ねた時には、お父様の実家にあった大好きなオルゴール時計を思い出して絵にしています。「今度一緒に行きましょうね」、写真好きのお父様に「撮ったら見せてくださいね」と、語りかけているようで、深い愛情と優しさがにじみ出ています。文末には体を気遣う言葉が必ず添えられています。 Kさんは、お父様との思い出を綴りながら、お父様の記憶を呼び起こそうとしました。毎日のようにお見Story 舞いに行っていたお母様が話題にできるようにとの心配りもありました。お父様は思い出しては「うんうん」と嬉しそうにしていたといいます。Kさんはその後、転勤先から戻っても絵手紙を出し続けました。残念ながらお父様は昨年お亡くなりになりましたが、3年間の絵手紙は、お父様の思い出とともに家族の大切な宝物になりました。

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