つなぐ通信 vol.02 2013夏号
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13TSU NA GU TSUSHIN 上/鎌田さんのお父さんが作ってくれた作業用の多目的木箱。60年以上前のもの。 中/傘を留めるバンドにスナップを打ち込む作業。 下/鎌田さんのお師匠さんからいただいた石突を留める道具。●ハマヲ洋傘店東京都三鷹市下連雀3-23-10☎0422-43-16669:30~18:30 日曜定休誰も作ったことのない生地で新しい傘作りに挑戦したいを楽しみに待っているお客様のことを考えると休んではいられないのです。 傘の生地の話しになると鎌田さんの瞳はキラキラ輝きます。最近念願の芭蕉布で作ることができたと、嬉しそうに傘を見せてくださいました。超高級な芭蕉布は作りたくても手が出ない憧れの生地。希少なもの、制作が難しいものに出会うと「職人魂」が燃えます。紗や絽などの透ける素材には共布で裏打ちをします。科の木の皮で織る科布、美濃和紙、30年代のアンティークレースでも作りました。驚くのは、どんな難しい素材や技術を要するものでも、今まで一度も失敗がないことです。 鎌田さんはお母さんからいただいた大切な着物で作った傘も、欲しい人がいたら譲ってしまいます。「また作ればいい」と、ものには執着がありません。作ることが楽しくて、傘を作ったことで想いは満たされるのです。今の夢は産地特産の生地で傘を作り、都道府県別に並べて眺めること。依頼が絶えない毎日、取材中に傘修理をお願いするお客様もやってきます。「いつ実現するのでしょうねえ。でも希望は捨てません」と笑顔を見せました。1930年生まれ。武蔵野市吉祥寺出身。傘職人・ハマヲ洋傘店オーナー。戦後両親と一緒に満州から引き上げ16歳で傘作りの道に入る。その後恩師となる傘職人・柳田晄四郎氏の元で修業を積み22歳で独立。三鷹にハマヲ洋傘店を創業する。着物で傘を仕立てる傘職人として有名。恋いこがれていた念願の芭蕉布で作った日傘。上の部分は共布で二重にしています。作らせていただいたのがあまりにも嬉しくて、残った芭蕉布でバッグやポーチを作りました。お礼に送るのだといいます。鎌田 智子さん 現在、82歳の鎌田智子さん。若さの秘訣は「若い方とたくさん接しパワーをもらうこと」といいます。鎌田さんの傘作りの手伝いをしているのはお若い峯田麻起子さん。 お客様から送られてきた着物を解いて生地にします。銘仙(めいせん)、子どもの着物、絞り染めや大島紬などたくさんの種類があります。 二代目となる傘専用の「ペガサス」のミシン。  日本刺繍やジャカードの着物で作った傘。お客様ご自身が制作したろうけつ染め作品、エルメスのスカーフなど、持ち込まれる生地も多様。ばしょうふしゃろしなしなみ の左/二代続いているお客様からお礼にいただいたもの。 右/昭和28年6月14日の開店記念に配った寒暖計。手元に1本も残っていなかったので、いただいたお客様が気を利かせ鎌田さんにお返ししました。ふ

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