つなぐ通信 vol.02 2013夏号
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10TSU NA GU TSUSHIN  飯田純久さんが、三鷹の傘職人・鎌田智子さんの門を叩いたのは多摩美の学生のとき。自分のデザインしたテキスタイルで傘を作りたいが、作り方がわからない。傘作りを学ぼうと方々訪ねましたが断られ、辿り着いたのが鎌田さんのところでした。 「鎌田さんは、傘作りを見せてくれても、手取り教えてはいただけませんでした(笑)」昔の職人さんは、親方の技術を見て盗んで学んだといいます。飯田さんは、鎌田さんの傘作りを見て帰り、それを参考に自分の傘を作り直して持っていき、鎌田さんに見ていただく。そういうことを繰り返しながら徐々に技術を身につけていきました。なかなか手に入らない傘専用のミシン「ペガサス」も探して購入。鎌田さんからは、傘作りになくてはならない傘の木枠型をいただきました。 卒業後、趣味で傘作りをしていた飯田さんでしたが、傘作りへの研究熱心さが鎌田さんや傘骨製造会社の協力を得、また展示会への出展で手応えを感じたことも後押して、傘作家として歩む決心をしました。工場・工房探訪傘作家の飯田純久さんが大切にしていきたいのは傘職人の鎌田智子さんから受け継いだ作る人も使う人もワクワクする暮らしの傘文化。お手本を見て直して何度も通い研究した独自の傘作り傘文化を大切にしたいから少人数で丁寧に作る横浜「イイダ傘店」1981年生まれ。神奈川県出身。傘作家・イイダ傘店代表。多摩美術大学テキスタイル学科卒業。学生時代傘作りをしたのをきっかけに、傘職人・鎌田智子さんの手ほどきを受けて傘作家の道に進む。生地から傘のパーツまですべてオリジナルで、個人オーダーのみの傘を制作。映画やCM用、ブランドコラボの傘作りなども。http://www.iida-kasaten.jp/飯田 純久さん 大学でテキスタイルを専攻していた飯田さんは「布作り」と「傘作り」の両方に力を入れています。生地は自分でデザインしたオリジナル。既製傘はグラスファイバーなどの軽い骨が主流ですが折れやすいため、少し重くても修理が利き傘の形状がきれいに出る鉄の傘骨を採用。柄の先端部の石突や傘骨の露先にはメッキしない真鍮を使うなど、ほとんどが特注したパーツ。傘制作は昔ながらの畳に座ったスタイルです。傘デザイナーとは一線を画す細部までこだわった独自のもの作りに、傘職人としてのプライドを感じます。 イイダ傘店は、受注会による個人オーダーで傘を制作します。お客様は生地や柄などのパーツを選び、タグや金属プレートに名入れして自分だけの傘に仕上げてもらいます。現在受注に生産が追いついていかない状態ですが「傘文化を大切にしたもの作り」がしたいので、少人数で丁寧に仕上げる今のやり方を続けていきたいといいます。一人ひとりのお客様のために、長く使え愛着のわく「特別な一本」にしたいのだと。傘職人の魂をつなぐ愛着のわく「特別な一本」にしたいから作家として職人として、細部までこだわる。えいし づきしんちゅうえつゆさき

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