つなぐ通信 vol.01 2013春号(創刊号)
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32TSU NA GU TSUSHIN  若い頃は、とにかく素敵なものなら何でも欲しかった。今、そういう人をまのあたりにすると、白々しい思いがする。きっと、以前は周りの人々を白々とさせていたのかと思うと、今さらではあるが恥ずかしい。 ヨーロッパのアンティークには特に狂喜乱舞して、限りがある懐と相談して選ぶ。蚤の市でテディベアが並んでいるブースを見つけ、舞い上がった気持ちを沈めてくれたのは、テディの横にある、幼い子どもがそのテディを抱えて写っている写真だった。ケイト君が愛したテディ、ロビンちゃん、というような言葉も添えられている。そういう思いを受け継いで大切に愛してあげる、そんな思いがなければ、遠い日本にまで連れて帰る権利はない。 何年も大切にしていたものを辛い思いで手放す、それがいろんな人の手に渡ってここにある。『つなぐ』ということの本当の意味を私たちは知らなくてはいけない。それからは、少し自重して大事に出来る物を数少なく選ぶことに努力する。いろいろな失敗を経てここに至る。 インスタグラムというアイフォンのアプリに夢中である。今の私のブーム。これは写真や絵を投稿して、世界の人々と共有するというもの。 そこで、登場するのが、海外で買ったアンティークや、昔着ていた服を解いて手西村玲子のつなぐ暮らし持ち主の思いを継いで愛してあげるとモノはますます輝いていく。作り作品にしたものなど、構図や光の具合を調節して写し作品にする。まるでスタイリストとカメラマンを両方兼ね備えたような現場で、正直いって散らかる。お天気がいいとカメラ日和とばかりに落ち着かない。仕事も、スポーツクラブも後回しになり気味。ここで携帯カメラではあるが、被写体のもの達にただならぬ愛情が芽生えてくる。これがこの趣味に走った長所である。日本のフォロワーの人から、私もテディが好きです、カフェオレボウルいいですね、とかいってもらえると、しんみりくるのだ。書棚を写して投稿したところ、フランスの女性が、私もCy Twombly(サイ トンブリイ)のその画集持っています、彼のアートが好きです、というコメント。嬉しい、同じ趣味の人がいたのだ。と、ますます嬉しくって世界につながっている感を強くしている。 時間を経ていいものはいつの時代にもいい。少なくなっていくそれらのものは、ますます輝いていくと信じている。私たち人間も同じ。頑張りたい。イラストレーター、エッセイスト。日々の暮らしの中で感じたことを絵と文で綴り素敵なライフスタイルを提案。幅広いファン層をもつ。クラフト制作活動や教室も主宰。現在インスタグラムに夢中。著書200冊以上。西村 玲子 にしむら れいこprofile

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