つなぐ通信 vol.01 2013春号(創刊号)
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20TSU NA GU TSUSHIN 錆びたトタン屋根、雑然と置かれた染色の資機材、増築の繰り返しで迷路のようになっている奥田染工場。あちこちからもうもうと湯気が立ちこめ「ここは一体なに?」。このワンダーランドから素敵なクリエーションが生まれます。スペシャルプレゼント!ここはデザイナー、学生インターンなどが集う、学びとクリエーションの夢工場。奥田博伸さん&吉田留利子さんが手掛ける浴衣のテキスタイルブランド『phro-o(フロフロ)』。非効率的なもの作りが差別化の魅力となったもの作りの距離の開きがもの作りの思想を失う ところが、人にあたえると他の方がまた別の技術を教えてくれる。それを全部自分の引き出しにしていたといいます。自然に色んな技術が身に付き、有名デザイナーとの関わりも増え、賞をとる作品も多くなりました。しかしあくまでも縁の下の力持ち。自分の名を売ろうとはしませんでした。 実は、お祖父さんも人のためによく動く人望のある人でした。だから父・正美さんが20歳の若さで工場を引き継いだ時、多くの方達が助けてくれました。利益を上げるためには、得意分野を量産する方が効率的で、材料コストも安くつき、ノウハウも育ちます。しかし、父・正美さんの仕事は「儲け」や「効率」とは逆行するものでした。クリエーションを重視し、きめ細かな対応ができるようにと捺染台(なせんだい)のサイズはバラバラ。常に新しいことに挑戦していました。 この「非効率」なもの作りが、今の時代にマッチしてきたように思うと、博伸さんはいいます。すでに大量生産の時代は終わり、現在はクリエーティビティなど他とは差別化できる「プラスα」の魅力が求められます。父・正美さんは、今の時代に必要なクリエーションのベースを育てておいてくれたのです。 父・正美さんは、海外生産などでもの作りの「距離感」がどんどん開いていくことを危惧していました。質の低下ばかりではなく「もの作りの思想」までも失われてしまうからです。デザイナーも現場の職人もお互いの「心」に触れなければ創造はできない。見ること、感じることの大切さを知って欲しいから、デザイナーが工場に来ることを歓迎しました。また「奥田塾」を開き、染色を学びたい学生、染織家などにも自分の技術を伝授。博伸さんもその塾生の一人として多くのことを学んだといいます。 「父の想いは僕だけではなく、ここで学んだデザイナーにもつながっていると思います。父が仲間を大切にしてくれたから、僕は今多くの人に支えられている。それは祖父の想いでもあり、父はそれを遺そうとした。だからこそ、僕も形にしたい。仲間と一緒に今まで培ってきたもの作りの意識を上げて、それをつなげていきたい」この姿を一番喜んでいるのは、父・正美さんであることは間違いないでしょう。奥田博伸さんのテキスタイルブランド『phro-flo』のてぬぐいを3名の方にプレゼントします!応募方法は33ページをご覧ください。人気ブランドの名前がズラリ。

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