つなぐ通信 vol.03 2013秋号
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06TSU NA GU TSUSHIN 面相筆(めんそうふで)の毛を磨くには「藁灰(わらばい)」を使用。毛の先に灰で微細な傷がつくので、水分の含みがよくなる。コシがある筆は「筆が自立」するため、細い線がきれいに描ける。安価なものは筆が自立しないので細い線が描けない。無理して描こうとすると手にクセがついてしまい、良い筆に替えたとしても描けなくなってしまうという。道具選びは重要です。写真はネズミの毛の代用でネコの毛を使用した根朱替筆(ねじがわりふで)。(写真左・中)柿渋を塗った和紙に美しい模様を切り抜いた着物の型紙。精緻な職人仕事はまさに「美術品」。虫食い穴にはほぐした和紙を埋め込み、柿渋を何層にも重ねます。(写真右)型染めに使用していた長さ7mのモミの木の長板。今はそれを作る大工さんもいません。現代工芸展入選作品『蜻蛉』。オーガンジ-とちりめんに友禅染を施し重ねたもの。正面は赤トンボ、横からは黒トンボに見える。江戸時代の着物に見られる遊びの技法。蒔絵(まきえ)や金継ぎの仕上げの艶出し磨きに使う「鯛牙(たいき)」。鯛の牙は硬く曲がっていて、先は細いが丸くなっているので、金が剥がれることなく磨くことができます。人毛を使用した漆塗り用の刷毛。粘りのある漆には人毛が一番といいます。割れた陶器などの修復には小麦粉に漆を混ぜた「麦漆(むぎうるし)」を使用。修復方法は100年後を見据え「修復前の状態に戻せるやり方」が基本。今も昔ながらのやり方が受け継がれています。 「そもそも職人とは新しい技術や表現に挑んできた人たちなのです。桃山の辻ケ花も江戸の友禅染も時代の最先端の技術と表現で作ったからこそ、今に残っているのです」瀬藤さんは、伝統技術・技法を形式に縛られた伝統工芸だけで終らせたくないといいます。優れた技術や道具があっても、商品や作品に「今」の人たちの気持ちを掴む魅力が無ければ伝統文化の継続は難しいのです。精緻な伝統技術と時代を見据えた新しい表現がこれからのもの作りに必要なのは間違いありません。 そして次の目標は、瀬藤さんのように修復技術を持った人たちが指導し、御神輿、お寺の仏像など、地域財産を地域の人たちで修復しながら守っていくシステムを構築すること。こまめな修復を行うことで、劣化の進行や修復費用が抑えられるのです。技術の伝承が日本の伝統文化を守ります。「自分の役割は職人や作家、それを支える道具職人や材料職人、作品を鑑賞する人、購入する人、そして修復する人をつなげていくこと。それが文化の保存や継承につながると思うのです」と。技術を伝える大切さ地元の財産は地元で修復 日本の道具職人の技術の高さや徹底したこだわりは目を見張るものがあります。たとえば蒔絵筆の一種に非常に細い「根朱筆」というものがあります。ネズミの毛で作ったもので、しかも昔は木造船に棲んでいるネズミの毛が理想とされていました。潮風に当たり、狭い船内を走り回るので適度な毛の研磨があり、筆として良質な毛の状態だという説などがあります。精度を高める追求は実に繊細です。しかし現在は制作が困難で、ネコの毛が代用されています。 職人にとって道具は命。職人を支える道具職人や材料職人たちの徹底したもの作りを知れば知るほど、日本の伝統技術・伝統文化の奥の深さに引き込まれます。まきえふでねじふで

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