つなぐ通信 vol.03 2013秋号
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14TSU NA GU TSUSHIN  アートディレクターの稲垣聡さんが、タイプライターと出会ったのは約40年前、中学生の頃。 「英語ができるようになりたいと、オリベッティのタイプライターを買ったのがきっかけです。ところが英語よりも機械の中身に興味がわき、バラバラになるまで分解。それを組み立て直し、真っ赤に塗装しました。そこで機械の構造の面白さに目覚めたんです」 そのうち、車やバイクのメカニックに興味を持ち、分解、修理するようになった稲垣さん。10年ほど前、軍の放出品で壊れたタイプライターを見つけ修理。それから古いタイプライターを集めては解体し、中の腐食を直し、修理、塗装をしています。部品用に同じ機種を5台集め、1台にすることも。 「僕はアンティークのコレクターではないんです。古いタイプライターを、使われていた当時の感覚そのままの現役に戻したいだけ。機械の中身が面白いのであって、動くようになり、きれいになったら誰かにあげてしまうことも多いです」 文字を打った時の手に響く感触が、製造年代や機種、生産国によって大きく異なるのがタイプライターの魅力。 「たとえば写真のUnderwood 5no.03永遠のタイプライター機械美のロマンスRoyal Arrow PortableADLER30Remington Rand Underwood 5永遠のタイプライターUnderwood Universalライフル700で知られるアメリカの銃器メーカー、レミントン・アームズから派生した大手メーカー。タイプライターもどこか軍用っぽい。「写真のタイプは40~50年代のアメ車を思わせます」と稲垣さん。Royalはニューヨークに設立され、1906年から1970年代まで長きにわたりタイプライターを作り続けた。特にポータブルが有名で、丈夫で壊れないと評判に。アドラーは西ドイツのメーカー。アームの機構が独特で、印字する際、まっすぐに飛び出してくるのが特徴。持ち運びのしやすいポータブル型。Underwood NO.5同様、こちらも大人気となった。古き良き時代のタイプライターの代表格がアメリカのアンダーウッド。中でもNO.5は発売後10年間で50%のシェアを確立。20世紀前半を通して、欧米の秘書、ジャーナリスト、官公庁、作家などに愛用された。

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