つなぐ通信 vol.03 2013秋号
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11TSU NA GU TSUSHIN 写真=貝塚 純一 文=成田 典子 ヒトを読み、モノを読み、時代を読み、空間を仕立てるバブル期は数十万円単位の高額骨董も扱っていたが、自分の内面とずれたため買いやすい価格の「ふだんづかいの器屋」に変えた。自分の眼で選んで欲しいので作家名は表記しない。無名も有名も同線上にある。錆びた鉄の廃材で作った花器。華道家からも高い支持を受けている大嶌さんの作品。(写真左)大嶌さんが墨で大胆に書いた『魯山』の看板。木が腐った部分には鉄板を補強してある。(写真上左)作品の材料となる鉄の廃材。どんなものも素材解釈ができ、作品のイメージが湧くという。愛煙家の大嶌さんのタバコケースはジュース缶をつぶしたもの。(写真上中)年季の入ったトレードマークの革のエプロンで制作中。(写真上右)缶に入っているたくさんの道具類も実にカッコイイ!1954年生まれ。福井県出身。『魯山』店主。学生時代にヨーロッパ、中近東、アフリカをヒッチハイクで旅し、日本文化の素晴らしさを再認識する。1983年西荻窪に『魯山』を開業。作家の器,古器,古道具等「和」のテイストを扱う新しいタイプの器屋。若い作家からの支持も高い。自分のスタイルをしっかり持ち、作家としても活動。大嶌 文彦さん江戸後期の伊万里の白磁、江戸初期の常滑の壷が並ぶ。●魯山 ROZAN 東京都杉並区西荻北3-45-8 ☎03-3399-5036 11:00~19:00 火曜定休 http://ro-zan.com/伊藤聡信など、行列のできる陶芸家も。 「僕は人からツカミに入る。作家の脳みそと向き合うんです」 初めて会う作家は作品より「人」を見ます。作品を見ないで帰っていただく方もいるのですが、「ガンバレ」とはいいません。 10ページの写真は大嶌さんが初めて認めたガラス作家、小澄正雄さんの型吹きのグラスです。見た瞬間に「洋ガラスを作る者と脳みそが違う」と絶賛。「和ガラス」と命名しました。古唐津との衝撃的な出会いが小澄さんの作風を大きく変えたことをあとから知りました。大嶌さんの立ち位置はあくまでも「商売人」。作家には自分を安売りして欲しくないから厳しい。作り手としっかり向き合い一緒に「儲けたい」からです。NishiogikuboNishiogikuboNishiogikubo 大嶌さんは大まじめで「自分は空気を売っている」といいます。『魯山』には無駄なものが何ひとつありません。錆びたパイプや針金、ぼろぼろに朽ちたスコップなどが隅っこに無造作に置かれています。これらは大嶌さんの作品や棚などを制作する「材料」です。店内には古びた麻布が干してあり、トイレの中には作業で使う金槌や糸鋸の道具が掛けられています。意図的かもしれませんが、何もかもがこの空気の中でちゃんと「絵になる」のです。  「僕はもの作りの技術は無いが、素材から発想できる。素材の解釈ができないとダメだね」 使い込まれ経年したもの、ひび割れやつぶれ、穴の空いたものを繕いし、加工して新たな美を作ります。長い年月が作りだした自然の素材はこんなにも美しいものかと、ただ驚くばかり。大嶌さんはガラクタの中にも「素材の美」を見つける天才かもしれません。 『魯山』で展示会をして人気になった作家も多く、額賀章夫、

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